TAK44マグナム

NOPE/ノープのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.9
空に何かがいる。それは常に監視している。
だが何の為に?

「ゲットアウト」で度肝を抜くスリラーを魅せてくれたジョーダン・ピール監督の最新作は紛れもなく、ザ・B級映画でした。
しかしそれは決して予算規模やら出来映えを卑下してのB級という意味ではありません。
流石はジョーダン・ピール。
やはり常識の範疇にとらわらるような映画作家ではないですね。
本作も、根底に「人間に対しての皮肉」が沈殿した、きちんとしたテーマを持ったB級に仕上がっています。
いざ観ると、まるでシャマラン作品と言われても通るような内容で、日本だったら「ウルトラQ」のエピソードにあってもおかしくないと思えました。
けれど、もしシャマランやウルトラQだったなら、お猿さんの事件は挿入されなかったでしょう。
何故なら、あのお猿さんは黒人のメタファーでしょうから。
人種差別に対する並々ならぬ思いは今回も健在で、主に映画業界で有色人種がどのような扱いを受けてきたのかをサラッと語ります。
あくまでも想像ですが、監督がこの作品で言いたかったのは、「何でもコントロールできると思ったら大間違いだぞ」って事なのではないでしょうか。
たとえ専門家やハイテクを擁しても、相手を完全に自由に出来るかは分からない。
それが未知の怪異なら尚更ですし、当然ですが飼い慣らしたと思ったペットでも、気心を知れたつもりの隣人であっても、劣等と決めつけた有色人種は勿論のこと自由意志を持つものを勝手にはできません。
もし出来ると思うなら、それは驕り以外の何者でもないのです。
商業的な娯楽映画なので最終的に事件は「解決」の方向へ舵を切りますが、もし「解決」しなかったとしても「観た者にショックを与え、考えさせる作品」として成り立つと思います。

大袈裟でバカバカしい内容ではあるものの、こみ入ったぶん畳み方が雑に感じた「アス」よりも個人的に好み。
エンジンがかかるまで物語に掴み所がなく感じましたが、パークでの事件から主人公の家に「あるモノ」が降り注ぐ辺りで火がスパークし、チームを組んでの作戦が開始される頃には目が離せなくなっていました。
人によっては不真面目で意味の分からない映画と受け取るかもしれません。
しかし、こういった○○映画であったとしても己の主張を捻じ込めるジョーダン・ピールの作家性は尊重されるべきだと思います。
そういった意味でも世界に冠たる○○○という「偉大な先人」をもつ日本人こそ理解してあげるべきかもしれません。
もしかしたら日本をリスペクトするからこそのAKIRAやエヴァのオマージュだったのか・・というのは勘ぐりすぎですかね(汗)
それにしてもネタバレ無しでこの映画を語るのは難しい・・・
とにかく少しでも気になれば劇場で「その目でちゃんと」観て欲しい、奇天烈な怪作にして快作。


劇場(シネプレックス平塚)にて