田舎町のはずれにある黒人の経営する牧場にて突如起こる怪現象、及び悲劇、とそこへ出没し始める未確認飛行物体。その正体を突き止めるべく兄妹が奔走していくが、というところから巻き起こる話。
「ジョーダン・ピール × SF」的な雰囲気の予告編ですぐ興味を持ち、前情報それのみで鑑賞。彼の節というか、細かい設定を活かしつつの構成と、時にホラー、時にブラック、時にユーモラスな作風で、いやはやまたしても「怖おもしろい」内容に仕上がってるなと。とにかくジャンルからストーリーまで、何が起こるかわからない、どう転んでも興味深いという展開の妙。まぁUFOや宇宙人といった題材で否が応でもワクワクしてしまう俺の個人的な性分もあるっちゃあるけど。で『ゲット・アウト』『アス』と見てきてる人ならきっと期待してしまうであろうピールらしい「仕掛け」や「含み」の部分、これも考えながら見るとまたおもしろいという。例えば人種差別や黒人の歴史を表すようなものは毎度のこととして、更に今作では見世物とされるものからの目線というか、あとはSFとしても他とは異なる角度からの皮肉めいたメッセージが見て取れる。てか、単純に見ててハラハラドキドキしてしまうはず。冒頭の何やら不気味な、そして意味ありげな場面から、やがて見えてくる怖ぇエピソードよ。恐怖感の際立つ画面や音、その迫力と、その中での不穏な空気感と静寂、いやはや緩急が素晴らしい。映画館で見るべき映画と言えるんじゃないかな。そうそう、見終わってあの設定あの場面はなんだったんだと感じるとこもあるんだけど、これを後々考察していくのもきっと楽しい。ダイレクトでなく「たぶんこーゆーことかな」くらいで受け取れる程度の、突拍子のないようで緻密だったり、また玄人向けのようで大味だったりのバランスの取り方が上手いんだよなと。で最終的にやっぱり「エンターテイメント」へ落とし込むあたりも見事、拍手。
主演のダニエル・カルーヤがまた全編通していい味を出す。危機的状況でなんか絶望しすぎてなのか、冷静にあっけらかんと口にする「Nope(ノープ)」の場面が個人的にはツボ。あんまり言うとネタバレになりそうなもんで含みまくりのレビューでごめんって感じで。とりあえずジョーダン・ピール作品を見てハマった人、またはちょい異質なSFやスリラーを欲する人に、後の考察ありきでオススメしたい。そんなこんなで俺は大満足。
