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NOPE/ノープのmichikoのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
コレは怖い怖い怖い!
数多のホラー映画を観てきてジャンプスケアやグロテスクに慣れていると自負しており、むしろそういうのは楽しいと感じて好物の筈なのに、稀に登場する“正統派ホラーでは無く変化球なのに非常に怖い”映画。シャマラン監督の『サイン』の時にも同様に恐怖したのだが、この怖さは何だろう…ミニマムでリアルに描くUFOモノが私の琴線に触れるのだろうか。見せない映像と音圧の激しい効果音にて近づくUFOの圧倒的な存在感も恐ろしい。
多分それだけでは無い、奇想天外で意味不明な現象を突き立てられ、それをどう解釈していいのか、次にどの様な展開になるのか身構える事が出来ず、圧倒的な演出力にねじ伏せられるのだろう。

非常に怖くスペクタクルで楽しい本作だが、やはりそこはジョーダン・ピール。コレまた今まで以上に難解であり、一見すると「で、何が言いたいの?」となりそうなのだが、スペクタクル映画に見事に擬態した痛烈な批判映画であった。様々な解釈が出来るかもしれないが、見せ物と見る物の逆転劇を通して、映画業界の差別、偉業の影に葬られる存在を描く。それはつき詰めると奴隷制度の様でもあり、昨今のSNSで繰り返される消費物の搾取への警告の様でもある。
どことなくミヒャエル・ハネケ監督の『ファニーゲーム』を彷彿とさせる挑発さを感じる。

だがそんな社会であっても、主人公達が成し得た様に逆転パンチをお見舞いする事は可能かもしれない。我々にただの消費物でなかれ、ヒーローになれ、を説いているのかもしれない。
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