ロングレビューは後ほど。
かつて日本に旋風を巻き起こした男は歌った。
『言いたいことも言えないこんな世の中じゃ POISON』と。
そして、令和に産まれゆく子は、この曲を聴くとなぜか泣き止むという。
それは赤子が純粋無垢な魂を宿しているからなのかもしれない。
しかし、この世に生まれて、歴史を、現代の悪烈さを知る我々は彼の曲を聴いてこう思ってしまうかもしれない。
『言いたいことも言えないこんな世の中じゃ』(うんうん、分かるぞっ!)
『POISON』(は...?)
絶妙なモヤモヤ感を抱かせるこの歌詞に、あろうことか現代最高のスリラー作家ジョーダン・ピールが動いた。しかし、「言う、言われる」ではなく、「見る、見られる」として彼の国では伝わったようだ。(嘘)
そんな想像を超えた創造の発生点から、彼はたった3つ目の長編監督作でスリラー映画の頂点を更新してしまう。
※ホイテマ御大の撮影も大いに貢献
「見る、見られる、目を背けながら見たふりをして嘲笑う」
いまも止まることを知らないそんな歴史から、世界を熱狂させるエンターテイメントを届けてくれるここまで上質な作品は他にないだろう。
終盤、見られることで意味なく虐げられ(てきた者たち)、見ることで狩られ、その先で真の生を全うする者の、言葉なき『I see you』。
それは【マッドマックス】の『Witness me』ばりの、そして、○町の『POISON」』(は...?)への完璧なるアンサーとなる名シーンだった。