『半狂乱』や『超擬態人間』の藤井英俊監督の作品。コロナ禍における、何を真実とするのかがあやふやになり、真実よりも"空気感"に突き動かされていたような時代感(それは浮き彫りになったに過ぎず今でもさしては変わらない)を報道の責務や括弧付きの"闇の日本社会"に紐づけて語る。
マスクを触るシーンを利用したマッチカットやマスクを付ける外すで上下関係を表したりなど、"リアルそう"な演出が随所に施されていて面白い。それに反するような大袈裟な演技付や相変わらずのどんで返し劇で、相変わらず異様な雰囲気になっている。
SEやカメラも良かったが、特に25階と編集室を往復し、同様に地獄として描いている感じがとても良かった。後あの結束バンドのピタッとしたような静かさも素晴らしい。
ただ、あまりに露悪的な人間描写は、人の悪性の指摘になってはいてもそれ以上にはなってない。なんだかあるあるネタを見せられているようで、そこにどんで返し作劇が重なり陰謀論めいたニュアンスがあり、正直乗れないところはある。特にその手垢のついた「狂気」の描き方も冷めた場面のひとつであった。
そもそもこの映画では、当然想定されるだろうvs「コロナワクチン陰謀論」の構図が、コロナワクチン陰謀論者(というか両者の意見わ報道すべきというジャーナリスト?)の視点から「報道の責務」に焦点が当てられて、観客に感情移入を促す構図ってのが独特だよな。