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不思議の国の数学者のyuuuumiのレビュー・感想・評価

不思議の国の数学者(2022年製作の映画)
4.5
20年前の作品『オールド・ボーイ』(怖そうなのでまだ観てません)の主人公だったチェ・ミンシクと、この役を250倍の競争率で勝ち抜いたキム・ドンフィが共演する、世代を超えた友情を描いたヒューマンドラマ。

こういう作品を観ると、高学歴絶対主義である韓国では、私はきっと生きていけないと感じる。
どのドラマを観ても韓国の学生は夕方までは学校に通い、その後毎日のように深夜まで自習と塾が待っている…。

そんな学歴絶対主義の環境の中で、この物語の主人公である数学が苦手な高校1年生・ジウと、数学の天才で脱北者でもあるハクソンが出会い、まさに授業では教えてもらえない数学を通して社会の厳しさを学び、人間として何が正しくて、どのように行動するのか自ら考え、どのように感じていくのかを描き、正しい答えだけが全てではなく過程が大切である事を教え、時には感情をぶつけたり、傷ついたり、そんな静かながらも力強い描写をバッハの無伴奏チェロ組曲に乗せて響く音楽とともに描く姿に胸を打たれた。

この作品の中には素晴らしいシーンが山のように存在し、その中でも円周率π(パイ)を奏でるπソングをピアノで連弾する描写には涙が溢れ、黒板に踊る数式の羅列や、北という想像もできない困難な場所にいたからこそ説得力のあるハクソンのセリフや優しい眼差しの数々には心が震えた。

このような作品を世に送り出す韓国は、本当に素晴らしいと思うし、登場人物達の表現力の高さに感動した。
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