たく

月の満ち欠けのたくのレビュー・感想・評価

月の満ち欠け(2022年製作の映画)
3.3
思わず「そんなわけあるかい!」って声が出そうになった。泣ける映画として作ってるのは分かるんだけど、何より筋書きが強引だし、見方によってはホラーにも思えるという奇妙な作品。設定がちょっと「バンジージャンプする」に似てる。

事故で最愛の妻と娘を亡くした小山内のもとに、その娘が昔の恋人の生まれ変わりだと主張する男がやってくる。ここまでのストーリー運びは上手く、冒頭で小山内の家族の仲睦まじい様子をこれでもかと見せておいて、急に訪れた悲劇に打ちひしがれる小山内の姿に思わずもらい泣きしそうになる。ところが次の三角ターンで、まず三角の外見が現在と過去で全く変わってないのが白ける。ここは現在の姿を控えめな老けメイクにすべきだと思った。彼とかつての恋人のくだりそのものは丁寧に描かれてて良かった。

後半で伏線回収と胸糞な展開になって行くんだけど、筋書きがかなり強引に感じた。1回だけならまだしも2回も!そして何故こんな身近なところに?っていうのが不自然だし、ダメ押しのラストはほとんどホラーだった。あと、正木があんな少ない手掛かりから生まれ変わりをあっさり信じるのも不自然過ぎるし、この胸糞キャラが中途半端に作品からフェイドアウトするのもモヤモヤした。三角と恋人が映画好きという共通点があり、「東京暮色」「アンナ・カレニナ」が出てくるのにはちょっとテンション上がったね。ジョン・レノンの”Woman”がテーマ曲のように繰り返し出てきて、”Remenber Love ”の伏線的な使い方は上手かった。

驚きポイントを一つ。冒頭でゆいが小山内の家族写真を説明するシーンで、本人を目の前にして「あなたの奥さんの梢さん」「あなたの娘の瑠璃さん」って説明するのにはびっくり仰天。今の邦画ってここまで説明しないといけないの?
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