KANA

イル・ポスティーノのKANAのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
4.0

ミニシアターブームの頃観たものだと思ってたけど、、いやいや初めてだった。

こんなにグッとくる作品だったとは!

ナポリの小さな島。
無知で未熟な青年マリオと高名な老詩人パブロとのゆっくり進む友情。
何かドラマチックな事が起こるわけじゃない。
でも心がウルウルしっぱなしで。。
…こう書くと、ただ雰囲気にうっとりする映画と思われるかもしれない。
違う!
それこそ劇中の大きな軸となる“詩”と同じで、
パブロが言ってたように「説明するとたちまち陳腐になってしまう」…

とりあえず、
紡がれる詩の数々とともに“メタファーの美しさ”というものを改めて実感した。
恋人の叔母さんがチャチャを入れてきたように、メタファーなんてペダンチックでただのカッコつけなのかもしれない。
けれど、読む側にとってそこに美を感じ、心が揺り動かされればその時点でそのカッコツケも書いた者だけでなく受け取った者にとっての煌めく芸術となる。
それをマリオが示してくれた。
彼の素朴さに洗練された詩が飛び込み、生じたケミストリー。
始めは彼の無垢過ぎるもたつき加減が見てられないくらいだったのに!

詩と恋と、
郷愁を感じずにはいられない島やナポリ湾の美しい風景と、
味わい深いテーマ曲、
まるでラリってるかのようなゆったりとしたテンポ、
そして切なくもじんわりなラストの展開。

フィリップ・ノワレというのもあって、『ニュー・シネマ・パラダイス』の情感と重なった。

加速度化するテクノロジーの進化の波をサーフィンしてる中、ふとこんな作品に出会うと「ねぇ、これ落っことしたまま忘れてない?」とか言われてるような気がする。
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