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かがみの孤城のハルのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.1
予告を見た限りファンタジー系のふんわりした感じかな〜と思っていたが全然違った。
内容はかなりシリアス、その上ストーリーも各キャラクターの心理描写に特化したとても質の高い物語。
エンドロールを見たときに気付いたが原作は辻村深月。
なるほど、作り込まれた繊細な物語や設定の数々にも納得。
作風が一般ウケする性質ではないかもしれないけど、個人的には大当たりの部類に入る作品となった。

不登校になってしまった“こころ”がある日突然不思議なお城に連れて行かれる立ち上がり。
そこには見知らぬ同世代が他に6人。いくつかのルールを守りながら、城の中で願いを叶えてくれる鍵を探すというのがざっくりしたストーリー。

日本の教育における“学校”というものについて様々な視点からアプローチしている為、作中は生徒目線だけど子供を育てる親子さんが見ても受け取れるものは多くあるはず。
現に横には泣いている方がちらほら。
イジメや不登校を一括りにせず、一つ一つ、一人一人個別に目線を配っているのがポイントに思えた。
本作の子供達は学校に行けていないわけだけど、お城の中にいてもきちっと自主的に勉強をしていたり、元の世界ではフリースクールに通ったりしていて決して投げやりではないんだ。

自分もキャラクター達と同じ様な普通の公立出身なので、イジメなどがあった過去を思い出す。
詳細な人物背景から、キャラクター達の気持ちに共感できる部分がいくつも浮かび上がってきた。
公立ってさ、“ただ近くに住んでいるだけの同世代が集まっただけの場所”なんだよ。
でもそこで一度群れから逸れてしまうと、まるで異世界の存在となってしまうような恐怖感…
苦しく胸を締め付ける。

中盤以降、各所に散りばめてある伏線たちがどんどん繋がっていき、「おぉそうなるのか、でも確かにそうだよな!」と唸らせる畳み方も秀逸。
ラストに向け、しっかりと意味のあるシークエンスが続き、カタルシスをしっかりと感じられる。
正直、そこまで大きな期待をしていなかった分、これは良い誤算だった。

学校教育の在り方、そして人間関係。マジョリティーと違う道を辿った時の選択肢の有無などなど。
子供と大人、それぞれの目線でまた一味違った表情を覗かせるタイプの深みのある物語であり、問題提起の側面も併せ持った慈しみを感じる一作。
心許せる友人や理解を示す大人の存在、その温かな安らぎこそが孤独に苦しむ子供の闇を払える一筋の光だ。
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