ごんす

かがみの孤城のごんすのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.9
学校に行けずにいる中学生のこころ。
突然光りだした部屋の鏡の中に吸い込まれる様に入っていくと、そこには城があり同年代と思われる中学生達6人と狼の仮面を被った女の子がいた。


原作は未読。自分には少し合わないかもと思っていたけど原恵一監督なので観賞。
予想通り合わなかった部分が少なからずあったけれど人間の悪意が襲いかかる描写の鋭さや、これがずっと続くことはないのだろう…と分かっているからこそ感じる確かな安らぎの時間などは観ていて原恵一監督らしく、そこは予想以上に素晴らしかった。

物語で扱っている現実世界の問題に対して観た時にどう心が反応するかが結構人によって違うのだと思う。
ちょっと『すずめの戸締まり』の賛否の別れ方に似ている様な気もする。

子供だけでなく大人こそ考えなければならない気持ちになり胸が痛くなった。
しかし自分としては物語的にそこまで面白い話に感じなかったのも事実。


『カラフル』の様な一生忘れないようなフード演出も観たかったし、『河童のクゥと夏休み』では本作で扱っている問題も少し触れていてそちらの方が芯に迫っていた様に思う。
でも『河童のクゥと夏休み』は伝説的作品だと思うので比べるのは違うか…

物語の謎の部分が一気に明かされていく終盤の後だしじゃんけん感が強くて苦手で、仕方ないと思うけど原作を相当省略したのかな。
何で○○が○○になんだろう…とかよくわからなかった。


原恵一監督らしく非情な現実を突きつけてくる様な要素とざっくりとチューニングされたファンタジー、ミステリーの要素のバランスが悪く感じた。
好意的に解釈すると、より現実の問題が際立つようになってるのかもしれない。

物語の起承転結と一緒に安易に答えを提示してこない所は本当に良かった。

前情報をそこまで入れていかなかったので映画がいよいよ始まるぞと言う時にスクリーンに映し出された【日テレ】の文字を観た時の暗雲立ち込める気持ちと言ったらなかった。

凄く泣いている人がいて、本当に刺さって泣いている感じの鼻をすする音が聞こえてきたのが印象的で大切な一本になったんだろうなと思う。

藤森慎吾とても良かった。
ごんす

ごんす