サンヨンイチ

かがみの孤城のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.5
辻村深月原作、
原恵一監督。
否が応にも期待値の上がる作品で
いかにもティーン向けな作画ではあるものの
細部への拘りも感じる順当な仕上がり。

ジュブナイルものらしく、
ステレオタイプなキャラクターたちへの
感情移入には些か躊躇いがあるが、
彼らが中学生という
社会に初めて触れる立場で
ぶち当たる壁、葛藤、コミュニティ形成、不当な差別、大人の不条理さ、身近な人の死、
それぞれが突き刺さり始めると
感情が徐々に作品の色にへと染まっていき、
多くの観客に何かしらの共感を感じさせる仕様になっている。

物語の根幹にあたる謎と種については
かなり難解度は低く、
対象年齢に合わせた明快さに潔さを感じるが、
こちらの許容力が試されるほど
辻褄合わせがやや強引であることは否めない。


また、ラストの主人公の選択には
やや前時代的な退行とも言える。
アバンタイトルで語られた
「学校が特別な存在で全てだった」という論旨に対し
対となす答えがラストに必要だったのではないか。
あのラストが彼女たちと同じ境遇を持つ人々に対しても最適解であるとは限らず、
その可能性がもっと示されていてもよかったように思う。