福福吉吉

かがみの孤城の福福吉吉のレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
中学1年生の安西こころは同級生のいじめが原因で不登校になっていた。ある日、自室の鏡が光り、そのまま吸い込まれたこころは絶海の孤城で6人の少年少女たちと狼の仮面をつけた少女「オオカミさま」に出会う。オオカミさまはこころたちに一年以内に城に隠された鍵を見つけたものの願いを叶えること、願いをかなえた場合はこの城での記憶は失われることを告げる。こころたちは戸惑いながらも鍵を探し始めるのだが...。

◆感想◆
突然自室に現れた鏡に吸い込まれた中学生の少年少女たちが絶海の孤城で共通の目的をもって心を通わせていくとともに、彼らが現実の世界で負った心の傷が明らかになっていくストーリーとなっており、彼らにとって現実の世界が重く辛いため、この孤城の存在が大事になっていく様子が強く印象に残りました。

光る鏡に吸い込まれた少年少女たちはオオカミさまから孤城のルールを伝えられ、否応なく孤城で鍵を探しながら共同生活を送る形になっており、孤城での彼らの姿は自由で穏やかな雰囲気に包まれていて、安心できる場所になっていました。それは即ち現実の世界で居場所がないことを意味しており、観ていて複雑な気持ちになりました。

本作のストーリーにおいて前半は孤城における少年少女たちの穏やかな日々とこころの現実世界での経緯を描いているのですが、こころの遭遇した出来事がなかなかキツイものになっていて、孤城の明るい雰囲気と現実の暗い雰囲気が交互に描かれていて、バランスが取れていたと思います。

ストーリー後半になると、少年少女たちの現実世界の実態をそれぞれ明らかになり、お互いの境遇を共有していくことになります。孤城のルールやオオカミさまの正体などの答えが明らかになっていき、納得できる終わり方だったと思います。現実世界の問題について無かったことにするような安直な決着をつけなかったことに現実感があったと思います。

なかなか面白い作品でした。学生の頃はどうしても学校という世界に縛られてしまいますが、大人になってみると如何に小さな世界だったかということが実感します。現実世界に苦しむ子供たちに本作の孤城のような逃げ場所があると良いのになあ、とつい考えてしまいました。

鑑賞日:2024年10月8日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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