むらむら

IDOL NEVER DiESのむらむらのレビュー・感想・評価

IDOL NEVER DiES(2022年製作の映画)
5.0
栃木の町興しを目的として、クラウドファンディングで制作された、骨の髄まで「井口昇」監督印のアイドル映画。

※6月頭に池袋シネマロサで観たのだが、感想を書き上げるのが遅くなってスイマセン(誰に謝ってるか謎だが)。

どこを切り取っても井口昇の焼印が押されており、俺のような井口作品を二〇作品以上は観ているマニアだと、目隠しされてても、数秒で「井口映画ですね!」と当てられる自信がある。

結成されたばかりの5人組アイドルグループ「イブニンググローリー」は、配信ライブとミュージックビデオを撮影するために栃木で一泊二日の合宿を敢行する。怪異現象が渦巻く中でメンバーのメグは、明日、世界が終わってしまうことを知り、未来を変えるべく奮闘する。

美少女。ホラー。フェチ。

井口作品を三〇作品以上観ている俺にとってはお馴染みのテーマが並ぶ。

井口作品を知らない人に簡単に説明すると、どんなに低予算な作品でも、放り出さずに、自分の嗜好を絶妙に交えて、面白くするのが井口流。

例えば、初期の作品「クルシメさん」では、「足が痺れて立てない」という状況をサスペンスとして取り上げていた。苦悶の表情を浮かべながらも(フェチ)、今立ち上がれないとヒドい運命が待っている(ホラー)ので、なんとか立ち上がろうとするヒロイン(美少女)。一部の日本人にしか分からない、とっても地味かつ低予算な状況なのに、サスペンスとして見事に機能してて感心した。

今作でもそれは遺憾なく発揮されてる。

例えば、栃木のご当地カレーを合宿で食べるシーン。

食事はカレーだというのに箸しか与えられず、困惑の表情(フェチ)を浮かべるヒロイン(美少女)。あとなぜか後ろに幽霊(ホラー)。

予算の多寡はさておき、どれを撮っても同じテーマに帰結して、エンタメ要素を詰め込みまくるという点で、井口作品を四〇作品以上観た俺の感想ではあるものの、井口昇には、サム・ライミにも通じる作家性があるように思う。

ところで、

「ADのヤマノウチ トモユキ さんはどう思いますか」
「ヤマノウチ トモユキ さんが行方不明なんです」

と、やたらADの名前をフルネームで連呼してるな、と気になって検索したら、クラウドファンディング内で、「男性キャラクターの命名権」ってのも各2.5万円で販売してたのね。アイドルに名前を呼ばれて、それが2.5万円だったらコスパいいよなぁ。

俺も西野七瀬に

「むらむら さん が行方不明です」

って言わせたいぜ。

池袋シネマロサの観客数は、俺を含めて5人くらい。

確かに一般層にアピールする映画じゃないかもしれないが、それにしても観客、少なすぎ。

「熱海での乱交パーティー募集」で120人も集まるのに、この作品観てる人が一日5人、って、なんか凄く、不公平な感じがしてしまう。

「トップガン マーベリック」を作る予算の100分の1くらいで良いので、井口監督に予算を渡して、もっともっとこういった作品を作ってほしい。井口作品を五〇作品観て賢者モードに入っている俺としては、「カレー的なものも井口作品によく出てくるなぁ」という感想と共に、心から、そう思うのであった。

この作品の感想は、ここまで。

以下は2022年上半期のベスト5。順不同。

2021年のものは「レイジング・ファイア」の感想に書いてます。
https://filmarks.com/movies/99192/reviews/125135657

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2022年上半期のベスト5
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1.劇場版 おうちでキャノンボール2020
→コロナ禍を逆手に取り、コロナ禍での男女の性の悲喜こもごもを詰め込んだ傑作。今年のアカデミーAV男優賞は黒田悠斗氏に贈呈したい。
https://filmarks.com/movies/102439/reviews/133078934

2.スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
→シリーズ追いかけてること前提で、これでもかと過去作の要素を詰め込んでて泣けた。公開後のレビューでも、かなりみんなネタバレしてなくてfilmarksの民度の高さにウルっと来た。
https://filmarks.com/movies/86717/reviews/126310593

3.トップガン マーヴェリック
→なんか色々とツッコミどころはあるが、実写の迫力すげーーー!! ってなった作品。帰り道にFー14で帰りたくなった。
https://filmarks.com/movies/75103/reviews/135941636

4.シャドウ・イン・クラウド
→同じ航空機モノだが、「クロエグロースモレッツ ファン感謝祭」に振り切った構成に感動。俺は好き。
https://filmarks.com/movies/92987/reviews/131902391

5.TITANE/チタン
→近未来的なホラーファンタジー。ステロイドマッチョなオッサンと脱ぎたガールの主人公がめっちゃ魅力的だった。
https://filmarks.com/movies/90523/reviews/131758331
  
悲しかったこととして、個人的には「ただ悪より救いたまえ」の冒頭に出てきた笹塚の老舗ラーメン屋「福寿」がついに2022年5月閉店してしまったことを挙げたい。
https://filmarks.com/movies/90616/reviews/125373079

というわけで「エルデンリング」にハマってたこともあって鑑賞数が減ってますが、下半期もよろしくおねがいします。

(おしまい)
むらむら

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