MasaichiYaguchi

教育と愛国のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

教育と愛国(2022年製作の映画)
3.9
2017年に大阪・毎日放送で放送され、ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した「映像’17 教育と愛国 教科書でいま何が起きているのか」に追加取材と再構成を施して劇場映画化した本作を観ると、本編に登場する或る教授ではないが、「ここまできたか」と愕然としてしまう。
右肩上がりの経済成長が見込めず、コロナ禍で益々社会が閉塞感に覆われるこの頃、世相が「保守化」せざるを得ないのは分かるような気がする。
その社会風潮に乗るように「右傾化」を望む人々が台頭していく。
その人々が権力を持っていれば、加速度的に周囲や関係する機関に「保守化」「右傾化」は広まる。
このドキュメンタリーは、小中学校や高等学校で道徳や歴史の授業で使用される教科書を題材に、日本の社会の変化を浮き彫りにして警鐘を鳴らす。
少なくとも私が義務教育時代にはなかったことが、今の日本では起きていることを痛感する。
戦前の軍国主義への反省から、戦後の教育は常に政治と切り離されてきた筈だ。
しかし2006年に教育基本法が改正され、戦後初めて「愛国心」が盛り込まれ、それ以降「教育改革」「教育再生」の名のもとに、教科書検定制度が目に見えない力を増していく。
その目に見えない力とは、「同調圧力」とも「政治的圧力」と言えるものだ。
そのことによって教科書問題に止まらず、慰安婦問題など加害の歴史を教える教師や研究者へと波及し、バッシングという形で具体化していく。
本作は、「今ここにある危機」として教育現場の実態を明らかにする。