ミ

ラスベガスをやっつけろのミのネタバレレビュー・内容・結末

ラスベガスをやっつけろ(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

終始ドラッグまみれで揺れ動く視界。
曖昧になってゆく幻覚と現実。
はちゃめちゃなストーリー展開とは裏腹に、ハードドラッグを信仰した70年代の末路はなんだか少し物悲しい。

たたみかけるように進んでいくストーリーは、観るものに理解など求めていないかのようだ。60年〜70年代アメリカのヒッピー文化の盛り上がりと、幻覚剤による精神の解放を提唱したティモシー・リアリーという存在が、この作品を読み解く鍵となる。

1955年〜1975年まで続いたベトナム戦争下において、反戦争、自由、自然、平和を求めたヒッピー運動は急速に広まった。「自由」の意味は広く、フリーセックスやフリードラッグもそれに含まれた。学生を中心とした中流階級の白人が主体となり、大麻やLSDを用いた精神的な高揚感を求めた。時同じく1960年ごろから心理学者のティモシー・リアリーが、LSDやキノコなどの幻覚剤は意識を拡大し現実というゲームを断ち切るものであると提唱し始めた。
この2つの大きな流れにより多くの人々がドラッグを使用していたが、戦争の終結とドラッグの取り締まり強化によりヒッピー文化は衰退してゆく。
しかしドラッグを常用していた人々が、文化が衰退したからと言ってすぐに使用をやめるだろうか。
実際、やめることは難しい。肉体的、精神的依存ももちろんあるが、何よりもドラッグ以上の高揚感を普通の生活から得ることはできないからだ。
作中でも述べられているが、ドラッグのポジティブな効果がもてはやされ町中に溢れていた時代を生きてきた主人公たちは「被害者」と言っても過言ではないのである。


映像に関しては
・古典的な手法である繰り返しをあえて用いずストーリーに盛り込む点
・独白部分にか細くBGMがある点
・車を運転するシーンの背景を現実にはありえない画角で切り取っている点
・ストーリーの収束にかけて定点撮影になる点
が独特でこの映画に深みを与えている。
本当にラリっているようにしか見えないジョニー・デップとベニチオ・デル・トロの演技は必見。
ミ