イチロヲ

ラスベガスをやっつけろのイチロヲのレビュー・感想・評価

ラスベガスをやっつけろ(1998年製作の映画)
4.5
野心家のジャーナリストと弁護士の2人組が、オフロード・レースの取材先となるラスベガスで、ドラッグ漬けのラリパッパ騒動を巻き起こしていく。ハンター・S・トンプソンの体験記(1971年度)を映像化している、サイケデリック・コメディ。

ヒッピー・ムーブメントの余波を受け、アメリカ国民が生きる意味を失い始めた時分の物語(日本のシラケ世代と似ている)。アメリカン・ドリームを追い求めている2人組ジャンキーが、期待高まる取材旅行をバッド・トリップへと変容させてしまう。

テリー・ギリアムの稀有な感性とキャスト陣の役者スキルが、人工カンナビノイド的な化学合成を見せており、もはや幻覚作用の追体験ムービーとなっている。映像内の情報量が凄まじい限りであり、癖のある人物が次々と絡んでくる展開が、痛快極まりない。

終局に入ると、ドラッグに意識改革を期待することについて、原作者なりの問題提起を吐露。あえてカッコいい言い方をすると「破滅の美学」というやつ。ヒッピー映画の最終章と言っても過言ではない快作。
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