ツクヨミ

さかなのこのツクヨミのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.8
好きなものを好きであり続けることの素晴らしさはまさに"好きに勝るもの無し"の体現。
おさかなが大好きなミー坊は、学校でも家でもおさかなのことを考えて生きている…
沖田修一監督作品。"子どもはわかってあげない"で独特で暖かな雰囲気を作り上げていた沖田監督の最新作が公開、さかなクンの自伝"一魚一会"を原作にしたストーリーとのことでゆるーく沖田監督の雰囲気を味わえたらいいなと観に行ってみた。
まず今作はのん演じるミー坊が"おさかな博士"になるまでの過程を見ていく映画であるが、既におさかな博士として活躍しているミー坊の姿からスタートする。この時点ではのんがさかなクンの格好でわちゃわちゃしてるーなな雰囲気だったのだが、ミー坊が海に落ちた瞬間に子ども時代の過去に繋がるカット繋ぎがめちゃくちゃ好み。"007ノータイムトュダイ"のオープニングを想起させる上手い時間転換の編集から一気に心掴まれた。
そして今作は何かを"好きであること"を全て肯定してくれるような素晴らしいテーマ性が全編に溢れ、それが今作に於ける沖田監督なりの暖かさを形成していく。作中で主人公のミー坊は小さな時から大人までずっとおさかなが好きであることを全面に振り撒いている人で、言動や行動が他の人とは明らかに異常であり苦言を呈されようとミー坊は好きであることを貫く姿勢がめちゃくちゃ好印象なのだ。おさかなが好きだからおさかなばかり食べる、おさかなが好きだからいっぱいおさかなの絵を描く、おさかなが好きだから海に行って実際に取ってみたなどなど自らの好きを尊重する行動に自分の好きをいつのまにか同調させている自分にびっくり。好きなものを好きでいることはこんなに美しく素晴らしい、そんなことをこの作品は教えてくれる。
そして本作に於いてもう一つ大事なことは"自分の好きを尊重したり共感したりしてくれる存在"だと感じた。作中でミー坊は父親や少ない同級生たちから自分がおかしいことを分からせられる言動を受け、それが一種のストレスとして表される。好きなことをずっと貫くのは難しいし社会人になるとそれが色濃く出てしまう…そんな中でミー坊を肯定してくれる母親や同調してくれる友達や先生たちの存在がミー坊にとって大きな光となる展開に涙が溢れた。自分の好きを肯定してくれる存在は継続の一番の力になるし、同調して一緒に行動したり話してくれる存在は大きな喜びと生きる楽しさを与えてくれる。好きを貫くにはそんな存在が必要不可欠、自分の趣味に共感してくれる友人たちに改めてめちゃくちゃ感謝したいなと個人的に思えた。
"好きなものを好きであり続けることの素晴らしさ""自分の好きを肯定してくれたり共感してくれる存在の大事さ"を感じさせてくれる素敵で暖かな気持ちになれる良作だった。自分の好きがわからなくなったり壊れそうな時見て力を貰いたい作品でもあるし、自分の趣味を肯定してくれる大事で大好きな作品に出会えて感無量。
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