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さかなのこの8637のレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.0
よくこの題材見つけたよな、という亜種の映画化ながら、沖田修一節の効いた人情ドラマで笑うし泣ける。魚を狂うほど愛して、食すという過程含めてしっかりと好きになった。その人生を我々が咎めちゃいけないよな。

「のんだから女」でも「さかなクンの話だから男」でもない。恋愛どころか性別の定義すらすっ飛ばした映画を初めて観たので驚いている。客観的な男性性が多少見え隠れしていたのが気に食わなかったが。

のんはさかなクンでありながら、さかなクンを感じさせない。自身が"あーちすと"という事もあり、彼女が居るというだけで夢や創作に関するメッセージを受け止められる。彼女とミー坊の眼の輝きと拡がりを感じられただけでも劇場で観られて良かったと思う。
「横道世之介」あたりと同じ匂いの沖田修一的優しさがふんだんに盛り込まれていた。パスカルズの劇伴との親和性も抜群。夏帆の撮り方とか東京女子のそれでしかないし、豊原功補は歯科医にしか見えない。俳優の使い方が上手い上に監督自身もこっそり出演してる...

さかなクン改めミー坊は、周囲を気にしないが故に強い人間だ。周りを巻き込める。嘲笑われても自分の「好き」で巻き返せる。だからこそこのサクセスストーリーが生まれた。
本気で好きなものがあるって羨ましいと自分も友達に"映画"で言われた事があるけど、狂愛と呼べるほどのあそこまでの「好き」がないと駄目なのかもしれない、やはり。僕も勉強しなきゃなぁ...
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