とにかくお魚が大好きで、朝から晩までお魚のことばかりを考えているミー坊。
将来の夢はもちろんお魚博士。
その夢は大人になっても変わらなかった。
様々な人との交流を通して、ミー坊は社会の荒波に揉まれながらも自分の好きという気持ちを貫き通していく。
「これは私の映画だ」
そう言える映画が毎年1、2本ある。
去年は「街の上で」、そして今年は「さかなのこ」だった。
閉館時間ギリギリまで水族館でタコを眺めるミー坊。
そんなミー坊にお母さんはずっと付き合ってくれて、最後には図鑑を買ってくれる。
「また来ようね」
まさに自分も同じだった。
幼い頃、生き物が大好きだった自分を休みの日になると博物館や動物園、水族館などに連れていってくれた。
魚や恐竜を通り、最終的に自分は昆虫に興味を持った。
家では色々な虫を飼ったし、自由研究もずっと昆虫。
学校では昆虫博士と呼ばれる虫漬けの毎日。
だからこそ小学生のミー坊はまさに自分の小学生時代だった。
ミー坊はその好き・得意(特異)を突き通したけれど、残念ながら自分は突き通すことができなかった。
思春期に突入した私は昆虫の趣味に恥ずかしさを覚えるようになった。
女の子にカッコつけたいとか思い始めれば更にこの趣味が邪魔をするのだ。
そして、もう一つの障害が受験。
小学生の頃は「虫の研究でノーベル賞をとりたい!」と本気で思っていた。
でも今思えばそれってものすごく大切な感情だったのかもしれない。
「ノーベル賞はともかく理系に進みたい!」
そんな純粋な私の思いは数学という怪物によっていとも簡単にぶち壊された。
今はきっぱり文転し、博物館の学芸員資格を目指すべく歴史を部屋する大学生だ。
「普通って?」
ミー坊の何気なくも真価を問う発言が胸に刺さる。
私みたいに好きの感情だけではどうにもならなかった全ての人へ。
私みたいに勉強が出来ず夢を諦めざるを得なかった全ての人へ。
ギョギョおじさんとして友情出演したさかなクン本人は成れの果ての姿なのかもしれない。
時代も人も変わる。
でもミー坊だけはずっと変わらない。
やっぱり環境なんだと思う。
場所と人に恵まれればその種は生き残れる。
私も自分の趣味を理解してくれる親と友達に恵まれたからこそ、昆虫の趣味からは少し離れたものの未だに好きでいれている。
実は今では自分に付き合ってくれていた母親の方がのめり込んでいて、地域の保全活動などを精力的に行なっている。
自分が子供を持った時、ミー坊の母親のように寄り添えるだろうか。
それとも捕まえたタコをその場でシメてしまう父親のようになってしまうのか。
まあどちらが良い悪いの問題ではないが……
ミー坊になりたいとは思わないがミー坊のように生きられたら。
最初はさかなクンの自伝的映画をのんが演じるというイロモノ作品だと思って少し鑑賞を躊躇っていたが、やはりそこは流石沖田監督とのん。
絶対に観ておくべき映画。
劇場で観れてよかった。