まっつん

さかなのこのまっつんのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
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沖田修一のフィルモグラフィでは、傑作『横道世之介』に近い作風か。しかし、いちばん連想したのはクリント・イーストウッド監督作『15時17分、パリ行き』。人生というけったいなうねり路を、優しく緩い紐帯で繋ぎ止め、まぁ悪くないんじゃない?とやんわり肯定してみせるのは、沖田修一の人生観からくるメッセージなのか、それともさかなクンの生き様がほんとうにそのように映るからなのだろうか。

いずれにしても、「好き」という得体の知れない感情、つまりは情動に突き動かされながら真っ直ぐに走り続けるミー坊の姿は、危なっかしくも映るが、何にも変え難く美しい。
高校生となったミー坊が帰宅した際、口を突き出したカワハギのポスターにキスをするシーンでは、何故か落涙してしまった。ああいう「マジック」がかかったシーンに、僕はほんとうに弱い。

そして本作はマルチバース世界の『あまちゃん』とも解せる(と、独りよがりな思いを表明してみる)。放映当時、同作を夢中になって見つめていた身としては、のん=能年玲奈が再び海に潜ってくれた、それだけで何かジンとくるものがあって始終目頭が熱くなっていた。
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