こえ

夢のこえのレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
3.7
黒澤明のユートピアとディストピア。
オムニバスの形式で、おそらく自身の幼少期と思われる風景から始まり、徐々に現代・未来の悲惨な風景に変わっていき、最後には…。短い話が「夢」という形態を借りて連続的に描かれる、幻想的な作品。
ディストピアには戦争があるのはいいとして、驚いたのは、原発が爆発してこの世が廃墟のようになっているという夢だ。黒澤明がそのように考えて映画で表現したというのは発見だった。
ただ、全体としては悲劇では終わらず、またユートピアで幕を閉じる。といっても、そこには「死」が描かれていて、それは自身の死を想定してのことかもしれない(映画は90年公開、黒沢の死去は98年)。全体を通しても、私小説的というか、監督自身の内面に通じる映画だと思った。
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