初見は確か、今は無き銀座のシネパトス。今回久々に見直したが記憶違いもありだいぶ印象が違ったな。
記憶では市川崑の極太明朝のオープニングがあったと思ったのだが、他の作品と混同していたようだ。またもっと雷蔵が活躍してたかと思っていたが、これも記憶違いだったようだ。カメラを横にして壁を登っているように見せてるシーン、長らく雷蔵かと勘違いしてたわぁ。
そして主演を務める長谷川一夫が、もうオッサンやないかい!
御大長谷川の映画出演300本記念作と銘打たれた作品で戦前の人気作のセルフリメイク。
長谷川は親の仇への復讐に燃える女形・雪之丞と、義賊である闇太郎の二役を演じる。
元は長崎の大店の息子だったが、元長崎奉行らの策略で抜け荷の罪を着せられ破滅させられる。死んだ両親の仇を討つために女形になり剣術を磨き、江戸で復讐を果たす。
“長崎の仇を江戸で討つ”という内容だ。
仇となるのが、鴈治郎・伊達三郎・柳永二郎の3人だ。雪之丞はまず鴈治郎の娘(若尾文子)で将軍のお気に入りの娘に気に入られ取り入る。そして内部崩壊を目論み真綿で首を絞めるように追い詰める。
やっぱり50台の女形に恋する娘というのが無理があり過ぎる。オッサンだしオバハンやん。
さらに盗賊の闇太郎が仇討ちを狙う雪之丞に肩入れ。
これに女スリ(山本富士子)や新進気鋭の盗賊・昼太郎(雷蔵)、闇太郎の部下に勝新などが豪華キャストが脇を固める。
米騒動が起き、一方で米の買い占めをさせ、一方で屑米を大量に捌けさせる。敵側は利害関係でくっついていただけなので簡単に瓦解する。
キャスティングはもう、御大に対する接待みたいなモノだから目を瞑ろう。
それを差し置いても市川崑の巧みな映像美に驚く。極端な暗闇の中で登場人物だけにスポットライトが映るカット割りの格好良さ。まさにカラヴァッティオのような陰影とコントラストの美しいことよ。市川演出の醍醐味をいかんなく味わえる。