海月るか

線は、僕を描くの海月るかのネタバレレビュー・内容・結末

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

今はInstagramで追ってる映画が多いから予告から絶対見たくて。タイ屋台麺をかき込んでジャストの時間に席に座った。
数組しかいなくて私はD列のど真ん中、1人の大きな空間に浸りながら見ることができた。

間に合って良かった。本当は公開されてすぐ見る予定だったし公開日もおさえてたけとサークルやらゼミやらで友達にも病んでるね笑と言われる状態だったから
気づいたらもう全然公開されてなくて 朝早くとか夜遅くとか変な時間しかなくて諦めてた。なんなら終わってしまったかと。
でも間に合って、このタイミングでこの作品に出会えて本当に良かった。
予告から涙していたが、作品の冒頭ただ涙する流星くんの演技から霜介が千瑛の作品から感じた突き動かされる思いというものを感じた。まだ作品のど頭なのに、セリフもないのに、その奥にある背景までは読み取れなかったけれど作品と出会った時の思いというものは伝わってきた。
改めて横浜流星のすごさを感じた。
そして湖山先生の作品にもまた涙が出た。
美術館で絵に惹かれることはあっても、映画だとどちらかというとその搾取を目指す職人とか、人に惹かれがちだが
今回の作品は人も、また作品も本当に胸を打つものだった。監督か演出か、妥協しない、この映画への思いを感じてすごくそれが良かった。

清原伽耶ちゃんはもとから好きだったけれど、今作品は本当に魅力的で今までで1番好きだと思う。意地悪な女の子かと思ったけれどそういう単純なものじゃなくて。

そしてなんといっても江口洋介さん。いつも楽しそうな印象を受けるが、この役どころでこんなにも輝ける人は他にいないと思う。どこを切り取ってもなんとも言えない楽しそうな表情で、描くシーンは本当に素敵だった。

今回は役者さんの顔にかなり接近したショットが多かった。それができるのは役者さん達の表情が語るものが美しく見事であること、他のものをうつしてサポートしなくても感情が溢れるように伝わってくること、見飽きないし食い入るように見てしまうこと、
本当に完成度の高い作品だった。
音のない瞬間も美しい。筆の音だけも美しい。
なのにエンドロールで流れる主題歌?が
ばりばりJ-popでがらっと印象を変えたのも面白かった

私が抱えていたわだかまり
それはなにかに秀でている人が羨ましくて、でも自分には才能がなくてそもそも持続的に挑戦したこともないわけだけど
ちょっとやってみて諦めてしまうから。
なのに羨ましくて。今更追いつけなくて
だからサークルでも舞台監督やったり学校では成績取ったり、そういう事務的なこととか自分から見つけなくても機会が与えられるものとか専門性が必要ないもので不器用な自分を誤魔化してきた。
高校に入って多彩なみんなに圧倒された。成績が良いだけじゃなくてさらにプラスしてなにかを持ってる、そんな人たちには敵わない。大学ももちろんそう。
テストの点数じゃない頭の良さが目立つ環境になるたびに羨ましいと思って、でも日々に追われて何かに挑戦するとか没頭するとかできなくて。そういうものって時間がかかるし自分で練習を積み重ねないとできないものだから諦めてしまう。
人から与えられたものでないとできない
自分で積み重ねることができない
それが私のわだかまりだ。
霜介を見ててそう思った。
芸術作品はテストの点数みたいにすぐ結果が出るものでもないしわかりやすく評価できるものでもない。わからなくなって筆が止まることもある
それでも悩んで悩んで、もがき続けて自分の線を見つけていく。
そんな過酷なことと常に向き合っていく覚悟というものを突きつけられた。

また、水墨画というものの印象も大きく変わって私はなにも知らなかったのだと思った。心惹かれた。
水墨画が見れる美術館を実習先にしたい

しばらく映画を見る余裕もなくて塞ぎ込んでいて、映画館で映画を見る体力がもつか不安だった。
でもまた映画に引き戻された。よかった。
やっぱり映画を見て生きていこう
そう思った。
海月るか

海月るか