このレビューはネタバレを含みます
賛否分かれているが自分は賛。迅速すぎる日本側の描写や何度見たか分からない『新感染』以降の悪い癖となっているスリラー映画でも泣かせてくる傾向を今作も受け継いでいたりなど色々気になるところはあったが、パニックスリラーの枠にとどまることなくそれぞれの人間ドラマを展開し、機内だけでなく上空と陸が分断し、また陸上でも飛行機を着陸させるかさせないかの分断が起こっている所をおまけ程度ではなく時間を割いてしっかり描いていた点が良かった。日本のプリンセス号、セウォル号事件、コロナ警察、様々なものが頭に思い浮かんだ。エンタメでありながら社会派ドラマとしての側面があって、『ザ・キング』に続きまたハン・ジェリム監督面白い作品を作ったなという印象だった。
まずパニック映画として、墜落シーンのスリルが凄い。誇張なしで手汗が止まらなかった。それに乗客の席なども音声に載っているのだが、映画館の中でも咳をしている人がいて映画の咳なのかリアルの咳なのか分からなくなる臨場感もあった。
ソン・ガンホ演じるク・イノ刑事の執念、イ・ビョンホン演じる元パイロットのパクがトラウマを克服しつつ過去の自分の思いを晴らすように乗客を救おうとする様子、その他大臣や刑事の妻・娘、全員の心情が少なからず描かれていて一つの事故を巡る群像劇としても優れている。
何となくウイルスの性質が掴めないというのがあって感染者序盤吐血しまくっていたのに後半水疱だけで済んでいたり、キム・ナムギルも生命力凄かったり曖昧な気がしたけど、未曾有のウイルスだから敢えて説明をハッキリさせないのもあるのかなと考えると何も言えなくなる。そこの辺りも憎めない上手さがあった。