たく

ザリガニの鳴くところのたくのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.7
ある事件の容疑者となった女性の裁判劇と彼女の過去の回想が並行して描かれるミステリーで、異質な存在を排除しようとする世間の醜さと、世間に嫌われながらも独り逞しく生き抜く人間の強さが対比されてた。恋愛モノでもあるんだけど、最後まで観るとけっこう怖い話。

ノースカロカイナ州の湿地帯で起こった死亡事件で、家族に見放されて湿地で一人で暮らしてたカイアに殺人の嫌疑がかかる。そこからカイアの裁判となり、彼女が被告席で過去を回想していくくだりで明らかとなる幼少時の悲惨な身の上にまず気分が沈む。ああいう無教養で暴力的な父親は、この時代には良くいたんだろうね。

文盲のカイアがテイトに文字を教えられて本来持ち合わせてた知性を表していく様子にワクワクさせられる。もう一人カイアの恋人として登場するチェイスがテイトと正反対の悪そうな奴で、カイアの身体を大事にしようとしたテイトと全く逆の行動を取る。彼がカイアと破局してからも執拗にカイアを追い回すのが怖くて、何でクソ男ってこういう行動を取るんだろうね。カイアが著書で高額の印税を手にしたんだからさっさと引っ越せばいいのにと思ったけど、「湿地の娘」たる彼女はこの地を離れられなかったんだろうね。

終盤は感動展開となって、カイアの愛の行方も一つの決着を見るんだけど、最後の最後でゾッとする。でも映画としてはこの描き方こそが正解なんじゃないかと思った。そういえば過去の回想で火の見櫓に登る思わせぶりなシーンがあったね。
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