ピートロ

ザリガニの鳴くところのピートロのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.8
たまたま原作を読んでいたので、ひとつ気になった点があった。映画ではなにげなくカイヤが自分の足跡を消すシーンがあったように思う。たしか原作にはなかったはず。これは蛇足。
※よく確認していないので勘違いだったらすいません。

他のユーザーの感想・評価

evergl000

evergl000の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

【適者生存】

原作未読。
(アーカイブで全ページ読める…。)

ザリガニは鳴かないけれど、原作者の母親が実際会話で用いていたフレーズがタイトルに。

舞台は1952年以降のBarkley Cove, North Carolina。湿地で孤独に生きるKyaに殺人の嫌疑がかかる。

Kyaの父はDV男。彼女が6歳の時、絵が上手で愛情深かった母親が出て行き、後に続けとばかりに姉と兄も1人また1人と家出してしまう。しばらく暴力が落ち着いていた父親も、手紙で妻に戻る気がないと知ると、Kyaを置いて失踪してしまう。

学校に行けなくても、家族が誰も戻らなくても、Kyaは湿地を去ろうとしない。
自然界に生息する生物は、環境に適応しながら命を全うする。空と水と動植物がKyaの教師となり仲間となる。父親の扱いを学んだように、湿地という大自然で生き延びる術を身に付けていく。

Kya子供時代の女の子が昔のAbigail Breslin似で、こんなに可愛い子を置いて家族が皆出て行くなんてと信じられない気持ちでした。彼女が小さな裸足と伸び放題の髪で小学校に手ぶらで行こうとする所は不憫で泣けてしまいました。

町の住民でKyaに愛情を持って優しく接するのは、弁護士と、家族の喪失を経験したTateと、南部白人支配の地域でおとなしく店を切り盛りする黒人夫妻だけ。その他大多数は彼女を汚らわしい異質の存在として嫌悪しています。
Kya the Marsh girlを自然や湿地の象徴と捉えて観ると、町民による彼女の扱い方は、まさに自然界や絶滅危惧種などに対する人類の眼差しと同じでした。歩み寄って理解を示す者、救いの手を差し伸べ共生を試みる者、利用して汚す者、飼おうとする者、破壊する者…。

TateとChaseという2人の青年から求愛されて、果たしてKyaはどちらのオスを選ぶのか。

クォーターバックと言えば花形であり、加えて町の有力者の跡取り息子とくれば、Chaseは少なくともBarkley Cove在住ティーン界の頂点に君臨するような高校生です。そんなKyaと真逆の立ち位置にいる男が純粋に彼女に惹かれてしまうのも、そしてまた敗北を喫する結果になるのも、非常に象徴的でした。たかだか富や筋肉😑では、大自然で鍛えられた真の逞しさに敵わないのです。

劇中Kyaが、蛍のメスはオスを誘き寄せて食べてしまうという話を紹介します。

(小説の方では
“Female fireflies draw in strange males with dishonest signals and eat them; mantis females devour their own mates. Female insects, Kya thought, know how to deal with their lovers.”)

具体的には、別の種類のメス蛍の発光を真似て、やって来たオスを食べるのだそうです。

Tateが同属なら、Chaseは間違いなく異属ですからね…。

まさか老後まで描かれて、そこで謎解きとは予想しておりませんでした。

生存に、罪の概念など必要ない。

ただ…
自然の生き物は、余裕があれば本能的に子孫を残そうとすると思うのです。単に授からなかっただけかも知れないけど、子供が欲しそうにも見えませんでした。まぁいいか。

原作者の元夫と彼の連れ子Christopherは、ザンビア滞在中に密猟者射殺の疑いが持たれています。特にChristopherは、アメリカに帰国後も色々やらかしたようで…。本が売れると過去も蒸し返されますね。

大好きな湿地の美しい景色を堪能できる作品でした。
Taylor Swiftが本作のために書いたエンディング曲がピッタリで、ずっと耳に残る歌でした。

“The marsh knows all about death, and doesn't necessarily define it as tragedy, certainly not a sin. It understands that every creature does what it must to survive. And that sometimes, for prey to live, it's predator must die.”

(小説は
“A swamp knows all about death, and doesn’t necessarily define it as tragedy, certainly not a sin.”)

冒頭で答えが既に出ていたという…。

“Life can change in a second.”

“Being isolated was one thing. Living in fear, quite another.”

“I don't know if there is a dark side to nature. Just inventive ways to endure. Against all odds.”

“They’re not deciding anything about me. It’s them. They are judging themselves.”
最初の伏線もしっかり回収されて、きれいな終わり方だった。
ただ、結末が粗方読めてしまったので、少し物足りなかった。

湿地に身を置く彼女にとってそこで生息する、生育するすべてのものが味方であり、また自分を脅かす猛威でもある。

ザリガニの鳴くところ、その意味をぼくはまだわかっていない。
通行人B

通行人Bの感想・評価

3.7

ある日、湿地で1人の男性の遺体が発見される。
容疑にかけられるカイア、犯人は誰なのかー


ー系のミステリーだと思ったらちょっと違くて
『湿地の娘』と呼ばれるカイアという人物の謎に焦点をあて
カイアの人生と湿地の美しさに触れられる
作品だった、何度か泣いた

ミステリー映画というよりドラマ性が強い気が


テイトかっこいい

小説も読みたくなった
りょた

りょたの感想・評価

4.5
フライヤーの雰囲気に惚れて前情報何も入れずに視聴。原作は未読。

初めにイメージしていた映画では全然なかった。勝手にホラー要素が強いものだと勘違いしていた。本作はミステリーと恋愛強めのヒューマンドラマといったテイストだと感じた。
原作がアメリカで大ヒットした作品なので脚本はもちろん面白いし、映像としての見せ方もめちゃくちゃ良かった。自然を誇張せずありのままで映しているのに物凄く美しく見えた。特に沼地は美しくも底の見えないミステリアスさを感じて引き込まれてしまった。
しかも映画としても芸術特化ってわけでもなくエンタメとしても楽しめる。

期待して見に行った作品ではなかったが久しぶりに良作な映画に出会えた。
今年の中でも5本の指に入る映画でした。
だざち

だざちの感想・評価

5.0
観て本当によかった、映像が美しくて自分もそこにいるような気持ちになった。気になる点はありつつも作品として完成されてて大分満足。
最後の展開は正直驚いた。
ちいさな子供も出て行く家とは。
湿地帯という情景がなんかいい
あかん
だめだ
難しすぎて暗すぎて真面目すぎて
私には無理でした
途中離脱
*𓇼 𓆡 「自然に善悪は無いのかも」𓆉 𓆛°。

1969.10.30@ノースカロナイナ州パークリー・コーヴ
原作未読。タイトルとポスター見ただけで映画館で観たい!と思いつつ結局行けなかったやつ。
あーーーこれは映画館で観たかった!!とファーストカットで心底後悔する美麗映像に息を呑む。ロケーションはもちろん、インテリアやファッション、小道具まで美術凝りまくりワールド。観てる間じゅう部屋の模様替えをしたい衝動に駆られた笑
こんなに美しいエンドロールもなかなかお目にかかれない。

吹替と字幕両方観てみたけど、私はより細かいニュアンスが得られた吹替が好きだったかな…浜辺では一緒に泣いた…(꒦ິ⌑꒦ີ)
24分の特典でこの作品に携わった女性の多さに驚いたけど、そう言われてみれば確かに女性目線あるあるが点在。パートナー選びの教本みもあるし、恋愛じゃなくても何かを喪失した傷をジワーッと癒してくれるヒーリング的なものも感じた。

𓅛 𓅫 𓂃‪𓈒𓏸 𓅱 𓅸 𓅿 ‪𓅟 𓅺 𓅞 𓅯 ⸒⸒ 𓎤𓅮 ⸒⸒
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2023/06/11レンタルDVD*字幕
A

Aの感想・評価

3.3
主演のデイジー・エドガー=ジョーンズがドラマのNormal people では演技がとんでもなく素晴らしかったから期待してたけど、ザリガニではアメリカンアクセントだからか、ちょっと微妙。
ミステリー好きな相方は、久しぶりにいい映画を観たと大満足。

2023 No.138
moty

motyの感想・評価

3.9
良質なミステリー。湿地帯を舞台にした映像も美しい。

カイアを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズが素晴らしすぎる。

本作は、単なる犯人探しが目的ではない。自然や生物と寄り添った、奥深いテーマのあるストーリー。
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