タイトルとパッケージの雰囲気からグロめのサスペンスを期待していたが、全体的にライトかつファンタジックな作風で恋愛要素強め。キスシーンの多さには少し面食らったが、人間という枠組みを超えた生物としての力強さを感じさせてくれる物語で、この角度からの生き様肯定はあまり見たことがなく唸るラストだった。
物語は、一人の男の死から始まる。
そして、誰が殺したのか真実を追求する裁判パートと、主人公の特異な生い立ちを描いていくパートの二つの物語が並行して進んでいく。
裁判パートは、誰が男を殺したのか、主人公が殺したのか、誰か別の人物が殺したのか、それとも事故なのか、という純粋な王道ミステリーを楽しめる。
生い立ちパートは、偏見と好奇の目に晒されながらも一人で逞しく育った女性の姿が描かれる。
主人公の女の子は、学校にも行かず本で知識を蓄え、読み書きに関しては男から学び、湿地での長年の暮らしから経験的に専門的な知識も得る。そのシャイで優しく聡明な女性像は確かに美しく、二人の男が彼女に強く惹かれる気持ちもわかった。しかも彼女、めちゃ美人だし。
二人の男に共通するのは世間体に囚われた部分で、だからこそ、彼女の自由体に強く魅了されたんだと思う。片方は支配執着し、もう片方は尊重放任のスタイルをとるが、この両者の男の違いも見どころの一つだと思う。
湿地に住んでいる彼女は自然と調和している存在であり、あるがままの自分に満足して暮らしている。世間のしがらみやルール、規律、常識に囚われていない、人間本来の、ある意味生物としての至極自然な姿で生活している。
しかし彼女の在り方は世間から見ると、それは異物でしかなくて、なかなか理解されないもの。
だからこそ分かろうとする”姿勢”が大切なんだと、この映画を通して学べた。
そして分かり切れないことがあることも…。
ーーーーーネタバレーーーーー
湿地と沼地は違う。
湿地は光の世界。
湿地の中に点在するのが本当の沼地。
沼は死を熟知している。
死を悲劇にしないし罪にもしない。
どんな生き物も生存のために奮闘する。
時には獲物が命をつなぐため捕食者を葬ることも。