MasaichiYaguchi

ロストケアのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.9
葉真中顕さんのデビュー小説を原作に連続殺人犯と検事が対峙し、何故彼が殺人を犯したのかに迫るヒューマンサスペンスは、ストーリーの進展と共に高齢な両親を抱える一人として、リアルに様々な問いを投げ掛けられている気持ちになる。
或る早朝、民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。
死んだ所長が勤める介護センターの介護士・斯波宗典が犯人として浮上するが、彼は介護家族からも慕われる心優しい青年だった。
検事の大友秀美は、斯波が働く介護センターで老人の死亡率が異様に高いことを突き止める。
取調室で斯波は多くの老人の命を奪ったことを認めるが、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張する。 
大友は事件の真相に迫る中で、心を激しく揺さぶられることになる。
本作では我々に「救うために殺すことは、正義なのか、罪なのか」という根本的な問い掛けがされている。
恐らく置かれた立場によっては、単純に斯波を断罪することが出来ない人もいるような気がする。