なつそら

ロストケアのなつそらのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
4.6
仕事終わりに面白い映画はないかとちょうど時間があったので鑑賞した作品。

知ってる情報は「彼はなぜ42人を殺したのか」のフレーズ、それだけ。

とんでもない映画でした。
最初からで申し訳ないですが、絶対見るべき映画だと思います。

メインテーマは介護。
介護されるものと介護するもののお話。
本当に考えさせられる映画です。

殺人者は殺した理由を救いと言い、ロストケア、喪失の介護という都合の良い理由を語る。
もう、その語りの力強さというか説得力というべきかその力は計り知れない。
実際に救われた介護に負担を感じている家族を積極的に描いているからというのもあるかもしれませんが、法律的には悪だけど心情的には正義に感じてしまう演出の素晴らしさ。もともと原作がいいんでしょう?
介護をして良かったという事例があっても良かったかもしれないが、私は当事者ではないので想像ができない…

さらに私が感心したのは、検事と犯人との対峙シーン。
複数枚の鏡の演出は、勝手な解釈ですが多面的に物事を捉えると…という演出に見えるし、机に映る検事の姿には、彼女の奥底の心情にも感じるし、犯人が主張する介護をしていない人間の安全地帯と対照的な底辺を指し示しているとも捉えられるし、とてもいい演出と小道具でした。

検事は長澤まさみ。前回見た「シン・ウルトラマン」と大違い。セリフに感情が乗っかってました。素晴らしい演技でした。
もっと良かったのは、やっぱり松山ケンイチ。この人はすごいね。言葉に力がある。彼だから検事と犯人との対話の均衡をアンバランスにできたんじゃないんだろうか?
ラストまで正義のアンバランスを保ったまま問題を投げかけて終わってくれた方が個人的には良かったかな?
ラストは多少、冗長的だったかな?

冒頭の刑務所に入りたがっている役の人には思わず声が出てしまった。
昔よくCDを買って聴いてました。
介護の苦労もあったと聞いていたので採用されたのでしょうか?
お元気そうで、素のままの彼女の印象でした。

自分のこと、子供のこと、親のこと。色々考えさせられました。

邪魔な音楽もなく余韻を楽しめて、見た後もしばらく味のあるスルメみたいな、問題を投げかけているとても良い作品です。
間違いなくオススメできます。
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