ますますWKW沼へ。
香港の雑居ビルを舞台に描く、二組の男女の恋愛模様。
前半のストーリーは脚本が荒いというか甘いというか、感情的には浸れなかった。
モウが未練がましいし、ドラッグディーラーの女性との関係も今ひとつ。
しかし!金城武のルックスでそれは精算される笑
あんなにカッコいいのに女々しいキャラなのが逆にいいのかな、とすら思える。
モグモグ食べてるのも可愛くサマになるっていうか。
パイン缶の演出と共に「すべてのものに賞味期限がある」という言葉が妙に響いた。
後半は『欲望の翼』のラストで尻切れとんぼ状態だったトニー・レオンがたっぷり堪能できた。
彼の思慮深げな目の演技が好き。
トランクスでなくブリーフっていうのもインパクト大。笑
そしてなんといっても本作の主役といえるフェイ・ウォンのイノセントな恋心が愛おしい。
演技は巧いのか下手なのか?とりあえず憎めない可愛さ。
前半の金城武と合わせた方が釣り合ってる気もするけど、敢えて大人なトニーを配合した不器用なケミストリーが不思議とよかった。
原題『重慶森林』は直訳すると「重慶の森」であり、『ノルウェイの森』へのオマージュとのことで、台詞や浮遊感はますます春樹さんみを帯びてる。
なによりこれは完全なアート作品。
ブレまくりの手持ちカメラ、スローモーション、早送り、ネオン…
ゲリラ的であり、ポップさもあるラリっちゃいそうなエッジの効いた映像。
冒頭なんかベッソンっぽかったし、夜の重慶大厦(チョンキンマンション)はブレードランナーっぽいディストピア感もあってたまらない。
キーとなる軽食屋の雰囲気だけでもエモーショナル。なんでだろう…ライティングかなぁ。
あと音楽もストーリーの貧弱さを大いにカバーしてる。
California Dreamin'はノスタルジックだし『夢中人』は幻想的なムードを盛り立ててた。
なんでもカーウァイさん、脚本より曲を先に決めてたらしく。
大人の色気一辺倒でない、ファンタジーっぽいムード作りもお見事!