KANA

ブエノスアイレス 4Kレストア版のKANAのレビュー・感想・評価

3.9

ミニシアターブームの時リアルタイムで観て以来。

香港からすると地球の裏側、ブエノスアイレスを舞台に描く男同士の愛の形。

トニー・レオン × レスリー・チャン

それぞれの色気が爆発。
トニーの憂いの瞳、レスリーのすかした流し目、そして片手に煙草。
小汚い部屋に下着姿で生活感たっぷりの環境でも絵になる二人!

本当は好きでたまらないのに、一緒にいると決まって怒鳴り合いの喧嘩に。
ファイ(トニー)は思いどおりにいかない相手に、ウィン(レスリー)は途方もない孤独感に嫌気が差してる感じで。
狭い部屋に閉じ込めた神経質なケミストリーは見てて苦しい…
でもふと相手の懐に入る瞬間があって、貪るように愛を確かめ合う。

「たまに無頓着な言葉で汚し合って
互いの未熟さに嫌気がさす
でもいつかは裸になり甘い体温に触れて
優しさを見せつけ合う」
          ーーとまさに『Sign』みたいな。

ただ、その交差もとても儚くて。
あぁ人間って…。
切なさもどかしさがたまらない。

あくまで突き放した視点で捉えながらも、夕陽を背に路地裏でのサッカー、食肉工場での血、イグアスの滝などのイメージが意味ありげに脳裏に焼き付く。
そしていつしかファイの魂に入り込み「人間なんて白黒割り切れずこんなもんさ」と、ある種達観した気持ちになるというか。

色調や音楽でのメランコリックなムードも最高に好き。
KANA

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