great兄やん

花様年華 4Kレストア版のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)
4.7
【一言で言うと】
「秘匿の“名残”」

[あらすじ]
1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウ夫妻がアパートに引っ越してきた日、隣の部屋にもチャンが夫と引っ越してきた。チャンは商社で秘書として働いている。ふたりとも忙しく、夫や妻とはすれ違いが多かった。やがて、チャウは妻がチャンの夫と不倫していることに気づく。怒るチャウは復讐心からチャンに接近するのだが...。

初ウォン・カーウァイ作品。

大傑作。何度だってこの甘美な雰囲気に身を包まれていたい。

一度も観たことがないウォン・カーウァイの作品なのですが、このような傑作をスクリーンにて新鮮な面持ちで望めた機会にただただ感謝したい。
始まった瞬間から匂い立つ“煌めき”には一気に引き込まれますし、ワンシーン毎のショットといい映し方といいマジで異次元なんすよね...しかも誰が撮ってるんだと思いきやクリストファー・ドイルですか…やっぱ天才だろこの人。

ストーリーとしてはどこか曖昧で軸が定まってない印象を感じるが、それすらも凌駕する映像表現の“技”というのが本当に秀逸。
赤を基調としたグラデーションに互いの寂しさを埋め合うトニー・レオンとマギー・チャンの二人がもう見事に様になってますし、なんと言っても一つ一つの動作に果てしない“妖艶さ”を感じてしまう。

タバコを吸う動作、コーヒーをスプーンでかき混ぜる動作、ましてやなにかを食べる動作ですらエロく感じれるあの艶やかさはまさに花様年華(=人生で最も美しい瞬間)をまじまじと体感させられますし、トニー・レオンがタバコを吸うだけでも画になるあのカッコ良さは本当に痺れる。禁煙中に観るのはかなり危険でしたね😅...

とにかく“綺麗”という言葉ですら不躾に思えてしまう映像美に終始心酔してしまうとんでもない一本でした。

正直ストーリーを追うと言うよりも洗練かつ耽美な世界観を味わうといった作品で、脈略の無い展開に多少困惑しつつも画の美しさに最後まで魅了される今作。

過去を思い出すことはできてもそれに手を触れることはできない。過去に募らせた秘匿の“想い”も今となってはただの“名残”。

不倫ではなく、あくまで“友人”の関係を保ち続けた二人。
いやらしさのない、プラトニックな関係を一貫した“気品”はまさに究極の“愛”を感じましたね🤔...