湿度の高い映画である。香港の湿度、人間関係の湿っぽさ、そして身悶えするかのような官能の湿度。音楽がさらにその湿度を高めていく。
直接的な性描写こそないものの、まとわりつく濃密で官能的な空気が支配する。大家のおばちゃんや社長とのやりとりのシーンで緩和されるからそのバランスも悪くない。
感情移入できるかは人それぞれだと思うが、この空気感は他の作品では味わえない独特のものである。色使いも抑制的ではあるがウォンカーウァイらしさが出ているし、ところどころ実験的な構成を混ぜてくるあたりも見逃せない。
まったく個人的な感想だが、カンボジアのシーンは理解できなかった。わざわざあのシーンを挿入したということは当然に狙いがあるのだとは思うが、あのシーンが蛇足で、その前で終わった方が高評価だったと思う。そんなこと言うと、お前は何もわかってないとお叱りを受けそうだが。