耶馬英彦

劇場版 ねこ物件の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

劇場版 ねこ物件(2022年製作の映画)
3.5
 猫を飼うには覚悟が必要だ。猫に対して決して怒りの感情を持たない覚悟である。猫は本能と遊びで生きている。悪意はない。赤ん坊と同じだ。赤ん坊が泣いたりグズったりしても親は怒りの感情を抱かない。もし抱くとしたら、その人は親になる資格がない人である。
 親が子供を殺した報道に触れるたびに、どうして義務教育で親の覚悟について教えないのか、疑問に思う。猫と人間の子供を一緒にするなとの指摘があるかもしれないが、生き物を育てるという点では、本質的な違いはない。
 二星ハイツ七箇条はとてもよく出来ている。猫を子供に変えれば、子供のいるすべての家庭にそのまま適用できそうだ。親になるということは子供の存在のすべてを受け入れることであり、子供第一の生活をすることである。猫は疎外感を感じることはないが、子供は親から受け入れてもらえないと、自己肯定感の低い人間に育つ。それは不幸を育てているのと同じだ。

 悪人が登場しない優しい作品である。ドラマは観ていないが、登場人物それぞれの物語が紹介されるのだろう。ドラマはドラマでほのぼのした時間が過ごせそうだ。人生の辛さとは縁がないが、たまにはこういう性善説の作品を観て、猜疑心に充ちた日常を省みるのもいいかもしれない。
耶馬英彦

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