けーはち

ミッション:インポッシブルのけーはちのレビュー・感想・評価

3.8
20年を超えるシリーズの原点、1996年の本作『ミッション:インポッシブル』は元々冷戦時代に日本でも「スパイ大作戦」の邦題で人気のあったTVシリーズの、ブライアン・デ・パルマ監督によるリメイク。

映画は、導火線がバチバチ火花を散らしながら縮んでいくオープニング、「このテープは自動的に消滅する」等のおなじみのクラシックな演出を挟んで、まさかのチーム全滅(!)、孤立無援の主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)が、裏切り者の尻尾を追いつつ自らの裏切りの疑いを晴らす、という後年の作に比べるとやや複雑な構図を見せるサスペンス展開。イーサン・ハントの親族があらぬ容疑で逮捕され人質に取られる、な~んて展開も本作ならでは。

しかし、イーサンは突破口を切り開くためアウトローを雇ってCIA本部に忍び込み重要機密を盗み出して、黒幕との交渉材料にするぜ、という荒唐無稽な流れを生み出す。そして、ド派手なアクションでなくむしろ無音で超厳重なセキュリティの合間をぬっていく手に汗握る超精密・隠密作戦が面白い。

クライマックスの高速鉄道TGVの上で繰り広げられるドハデなアクションも良いのだが、やはり本作はM:I映画シリーズの端緒として「冷戦時代とは異なるスパイの生き方」「旧作との決別」をはっきり打ち出しているところが印象深い(クレイグ=ボンドでシリアス風味の入った007もそうだが「冷戦も終わったのに、スパイなんかやってられるか~‼」とブチ切れるスパイ同士の内輪もめが発端になることが結構多い)。

本作では時代もあってVFXによる背景合成に違和感は目立つのだが、以後このシリーズでは簡明直截なド派手アクションを極力合成やスタントを使わずマジで身体を張るトムクルのクルった演技が売り物となっていく。はたして80年代からスターダムに居座り続ける小っちゃいおじさんが何処まで元気でやっていられるのだろうか……?