つかれぐま

13人の命のつかれぐまのレビュー・感想・評価

13人の命(2022年製作の映画)
4.0
【人間すげえ:洞窟編】

タイの洞窟に少年たちが閉じ込められたこの事件。そういえば最後どうなったのか?報道が徐々にトーンダウンしていったのが今にして思えば不思議だが、なるほどこういう事情だったのか!

アマプラが本作を全く宣伝しないのが不思議。これが映画館にかかるなら必ず行く傑作。映像、音響、俳優のどれもがリッチな映画らしい映画。さすがの職人ロン・ハワードだ。『ハン・ソロ』の失敗は彼のせいじゃない(全部ディズニーの・・)と確信。

こんな絶望的状況に立ち向かう人々の知恵と勇気。子供たちの強さ。その子供たちを支えたコーチと仏教の教え。このどれか一つでも欠けていたらと思うと、あらためて人間って窮地に追い込まれると凄い力が出せるんだなあと。火星から生還した『オデッセイ』を見て思った「人間すげえ」感を思い出す。本作はその「洞窟版」かな。

(一部の親を除いて)登場人物はパニックに陥らない。ハリウッド的クリシェならば、そのパニックをエンタメ化する(良くも悪くも)ところだが、そうはならずに各自が淡々と「生存」の一点に向けて集中する人間の知的な姿。そこをカッコよく崇高にすら見せてくれるのが、本作最大の見所(過去作『バックドラフト』みたいな大袈裟な音楽がない。ハワードのの熟成)。そして仏教信仰に裏打ちされた子供たちの強さ。こういう宗教の描き方はいいね。

子供の生還で終わらせずに、救助者の最後の1人が戻るまでをきっちり見せるのも良かった。そして犠牲者がゼロではなかったこと、この豪雨が温暖化によるものだということも忘れてはいけない。ジュラシックよりもソーよりも、これを映画館で見たかったよ。