わっしょい

13人の命のわっしょいのレビュー・感想・評価

13人の命(2022年製作の映画)
4.3
圧倒的リアリティの高さによる感情の揺さぶり。

2018年のタイの洞窟遭難事故の救出劇を基にした映画。

一言で言うと、リアルさが凄い。

まず、そもそも実話ベースという点。
当時、ニュースでも大々的に取り上げられていて、世界の関心が高かった。
事故の顛末や、ニュースを見た当時の感情も記憶に新しく、身近なものとして映画の内容もスッと入ってきた。

また、撮影のセットが凄い。
特に水没した洞窟内がめちゃくちゃリアルで、本当に洞窟を使ったのかとすら思わされる。
本物のようなセットにより、閉塞感や緊張感がリアルに伝わってくる。
半分くらいのシーンはこのめちゃくちゃリアルな洞窟内なので、作品全体への没入感も高まる。

題材と映像が共にリアルである為、映画全体通して高い解像度で伝わってくる。

ストーリー自体は実際の事故を基にしていて、当時の状況が感じられる。
13人の命の為に、多くの人が救出にあたっていたのだなと、改めて思った。
メインにスポットが当たるのはイギリスの救出チームだけれど、現地の知事や住民、海軍、水道技師等の人々の尽力があってこそ成し遂げられた救出劇。

当時ニュースを見ていた自分は、13人が無事に助かったことよりも1人の死人が出たことに、納得のいかないモヤモヤを感じていたことをよく覚えている。
何故、救出しに行ってあげた側が死ななければならないのかと。

ただこの映画を観て思ったのは、現場では、助かった数と死んだ数の大きさとか、助ける側か助けられる側かとか、言ってるような状況じゃないんだろうなということ。
大勢の人が現場にかけつけ、助けてくれだの、状況どうなっているんだだのと騒がしく、
世界的にも注目度が高くて連日ニュースにもなっている。
救出チームの見ているリアルと、野次馬や報道陣の中で伝わるリアルの温度感の差が、プレッシャーとして救出チームに重くのしかかる。
どうにもならない状況で時間が過ぎていく中、とにかくどうにかしなくてはならないという重圧が凄い。

結果的に、1人の死者が出てしまったのは悲劇だけど、13人が助かったのは奇跡以外の何物でもなく、どう感じたらいいのかわからなくなる。
映画の中では、沢山の関係者の想いが描かれていて、それぞれが一歩間違えば大惨事の状況下で力の限りを尽くしていたように見えた。
だからこそ、感情が複雑に揺さぶられ、疲弊し、悲劇に目を瞑って目先の奇跡を見たくなる。
救出チームのやりきったけど清々しいとは言い切れないような複雑な表情が印象的だった。

非常にクオリティが高く、重厚感のある映画だった。
わっしょい

わっしょい