いろどり

島守の塔のいろどりのレビュー・感想・評価

島守の塔(2022年製作の映画)
3.7
最後まで沖縄県民に寄り添い、お国のために自決するのではなく、生きろと言い続けた沖縄県知事、島田叡(あきら)氏の戦争映画。沖縄県警察部長、荒井退造氏とともに描かれる。

アメリカ兵は出てこない。9万4000人の沖縄の民間人が亡くなった現実にフォーカスした、捨て石にされた沖縄戦を描いている。

強い同調圧力がうごめくお国の軍人という立場で、玉砕ではなく県民の命を守るために声をあげることは、強い信念がないとできないこと。疎開を促進し、自ら台湾まで食料を買いつけに行く。禁止されていたお酒とタバコを解禁し、ときに県民たちと歌い踊る姿は、捨て駒としてしか見ていない大本営とは異なり、県民一人一人に寄り添った心ある人間だった。立場や出身で物差しが変わらない誇り高き人物。 

萩原聖人の実直な演技が非常に好感。

ラストには島田叡氏の慰霊塔、島守の塔が映される。とても大きく、綺麗に管理されていて、今も沖縄県民から大切にされていることがわかる。

沖縄県知事は、今も変わらず県民と政府の板挟みになっている。「標的の島 風かたか」という沖縄のドキュメンタリーで県民の一人が「今も戦争は終わっていない」と言っていたのを思い出した。

1945年、激しい地上戦で沖縄県民の4人に1人が亡くなったことを私たちは忘れてはならない。良い映画でした。
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