ロバ目線で人間社会を描くロードムービー。ロバの視点であぶり出される、人間の矛盾や愚かさ、そして傲慢さ。私利私欲ばかり追い求め、些細なことで傷つけ合い、いがみ合う醜い姿が浮き彫りになる。ロバと言えば、先日見た「小さき麦の花」でも作品の中で大切な立ち位置に置かれていた。いずれの作品でも、ロバが醸し出す愛嬌、そして課された作業を従順にこなす姿があり、我々をほっこりさせてくれた。それだけに、彼の直面することになる過酷な運命に、我々は深い悲しみを覚える。光と音楽で演出された効果的な映像に加えて、台詞のない静けさが、様々なことを我々に考えさせ、重く問い掛けてくる。前衛的な作風は新鮮さもあり、様々な味わい方ができる作品。
