鮭茶漬さん

別れる決心の鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
1.0
私は自分の感性に嘘はつかないのが信条である。映画評論をやっていて非常に困るのは、こういった賞レースやベテラン映画評論家の意見と、自分の意見が異なる場合である。申し訳ないが、カンヌで監督賞を、世界で賞レースを席巻し『パラサイト半地下の家族』の次はコレだとまで言わしめた本作、自分は全く良さが分からなかった。映画として優れているとも思えず、そもそもが面白みに欠ける。無理もない、これを言ったら身も蓋もないが、『オールド・マン』にせよパク・チャヌク監督の映画で唸ったことが私は皆無なのだから。

落下事故を巡る、捜査する警部と死亡男性の妻の関係を描いたサスペンスである。
たとえば、評価されている点が、サスペンスとロマンスの絶妙さが評価されているのだとすれば『羊たちの沈黙』のそれとは雲泥の差であるし、想像をビジュアル化する大胆な描写もパク監督ならではの斬新さを感じるが、突拍子もない場面転換も多く、いまいち映画世界に入り込めない。パク監督は、バイオレンスだったり、エロティシズムだったり、その描写が徹底していたと思うのだが、本作ではどれもが中途半端。不倫関係にあろうとも、密会で交わすのは少しコミカルさも際立つ、微妙な距離感の会話のみ。そこの艶を感じない。
例えば、単純なストーリー構造から、台詞の言い回しや役者の表情など細かくも多くを読み取る映画もあるが、本作は真逆である。会話劇が秀でた『ルース・エドガー』や、最近で言えば『イニシェリン島の精霊』なんかもそうだが、物語は単純で登場人物の些細な言動にハラハラした。逆に、この映画は複雑な物語の中で、男女の普遍性を感じるベクトル。しかし、それを感じるに至る描写がさほど巧みでないように思える。

ポン・ジュノが韓国のスピルバーグだとすれば、パク・チャヌクは韓国のデイヴィッド・リンチ的な立ち位置か?言い過ぎか?とにかく、駄目なものは駄目。いや、僕が未熟でした、これを良しとするくらいの感性を磨きます。
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