かすとり体力

別れる決心のかすとり体力のレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.0
映画作品って、観てすぐに「やべーおもしろー」ってなる即効性作品と、観てすぐにはそこまでだけど、その後、その作品について考えたり人と話したりする中で、だんだんとかけがえのないものになっていく遅効性作品があると思うの。

そして私にとって本作は明らかに後者。

で、なんでこんな言い訳くせぇ前文から入ったかと言うと、あのパク・チャヌク監督作品にも関わらず、観終わった後の最初の感想が「いや、とにかく上手いけど、もはやなんかよく分からんww」だったから笑

面白くない、とかではなく、なんか凄いのは分かるんだけど、手際が良すぎて脳の情報処理が追い付いていない、といった感覚に近い感じ。
(マジシャンがテクニックを磨きすぎた結果、何が不思議かすら観客に伝わりづらくなった、みたいな笑)

はなから面白くなかったり凄さも感じない映画だったりしたらそれで良いんだけど、本作において悔しいのが、まず映画としてうまいのがビンビンに伝わってくる上に、「ちょっとよく分かんなかったけど、こいつ何か凄まじいこと言おうとしてない?」っていう気迫のようなものが漂ってたこと。

ということで、めったにしないけど、鑑賞後にすぐさま再鑑賞。
(正直申してザッピング的に、だけど)

それでやっと分かった本作の全貌。

そしてそのときに思ったのが「やっぱ凄まじいことやってるけど、やっぱこの人変態や笑」という。

ってかさてかさ、本作はとにかく情報過多な上に、構成や画面転換等の演出も大クセで、かつあまり各シーンの意味合いとかを言葉や会話で説明してくれないという、かなりの集中力・読解力・想像力を必要とする作品なのは間違いないと思うけど、これ、初見でパッと全体を把握できた人いるの?純粋な疑問。いたら単純に羨ましい。。

ま、結局「愛」を描いている作品ということに違いはないけど、表面上はサラッとしているように見せておいて、意識レベルではドロッドロの情動がのたうち回り胎動しているタイプの愛、そしてこれ即ち「官能的な愛」というのをトラジコメディ—として描いた作品だと見ました。

そしてこの「官能的」というのをサブリミナル的に我々の無意識化に染み込ませてくるパク・チャヌクの匠の技。

画作りとかは基本さっぱりした、清潔感のある感じなのに、特にソレが画面内にいる際に漂うじとっと感、なんぞこれ。
これぞ演出力の妙味。ここまで「単なるエロ」と「官能」の違いを分かりやすく表現した作品も珍しいよなー。

そしてそういう意味ではソレを演じたタン・ウェイの官能度の高さよ…。
決して「色気がある」というわけでもない。当然エロくもない。ただただとにかく「官能的」という。
(まぁここら辺は語義の話と言うより個人の感覚の話に近いと思うで、あまり叙述しても意味ないか・・・・)

ということで、1回目もストーリーの大枠は理解できてそれでも十分面白かったんだけど、2回目、そのストーリーを構成する登場人物たちの内在ロジックまで理解した上で鑑賞すると(当たり前だが)面白さは格段に跳ね上がりました。

そしてそこから、隙を見ては本作のことをずっと考えてしまっているという。。
ここら辺が遅効性作品だなぁと。

ああ誰かと語らいてー。
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