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逆転のトライアングルのasamiのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.2
『逆転のトライアングル』映画館にて視聴。
リューベン・オストルンド監督作品。
第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。アカデミー賞でも作品、監督、脚本の3部門にノミネート。
チャールビ・ディーン、ハリス・ディキンソン出演。

ややネタバレのレビューです。↓
すごく面白かったので、やや長いです。






トップモデルでインフルエンサーとしても人気のヤヤと、落ち目のモデルのカール。
カールはヤヤに誠実に向き合おうとするが、ヤヤは金持ちと結婚するまでのビジネスカップルだと言う。
カールはめげずにヤヤを愛する。
2人は招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出るが、船内ではリッチだがクセモノだらけの乗客だらけ。
高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。
しかしある嵐の夜、アル中の船長のタガが外れ、嵐のせいもあり船内は大混乱に陥る。
海賊に襲われ、船は難破。
生き残った一行は無人島に流れ着く。



まずは導入。
カールのいるメンズモデルの世界。
さりげなく女性モデルとの収入格差の話が盛り込まれ、ルッキズムに支配された独特な空気が伝わる。

そしてヤヤとカールの喧嘩。
カップルのお金をめぐる会話がとてもリアル。
誠実に向き合いたいからこその言い分と、
今だけの関係だと割り切る側の言い分。
ここで、2人の関係の不均衡さが明確になる。
すごいリアル、と思ったら、監督とパートナーに実際に起きた喧嘩だそう。
なるほどね。

そして、パート2は船上へ。
金に物を言わせる俗物だらけ。
印象に残ったのは「あなた達にも楽しんで欲しい」から「泳ぐように」と命じて船のクルー全員に仕事を放棄させるベラという老婦人。
相手を支配しようとしていることにあまりに無頓着で、金持ちの無邪気さにイライラします。
私はその後の大惨事にこの行動が影響したように感じました(生の海鮮食材を仕方なく置き去りにした厨房)。
金と影響力が支配するクルーズが、この後、
目を覆うような〇〇まみれになるとは…
『バビロン』と言い、トレンドなのかな?
大混乱のバックに流れるパンクロックが最高だったな。

マルクス主義の船長(ウディ・ハレルソン)と、資本主義のロシア人富豪。奇妙に気が合った2人が酩酊し、嵐で大混乱に陥る船内にさらにカオスをもたらすのが面白かった!
精神的に不安定な船長のもと、船出していたのね、この船は!

そしてパート3。
辿り着いた無人島では金や影響力は力を失い、サバイバルの力がパワーをもつ。

ここで頂点に立つのは、船内ではチラリとしか映らなかった掃除婦。
中年のアジア人女性アビゲイル。
アビゲイル得た権力に酔い、立ち回りが変化していく。やがてはカールの美しさとセックスを通貨として食料を渡したりする。

まさに立場が逆転、そして変化するわけで、
力とは、立場とは、
その虚しさと可笑しさが込み上げてくる。



様々な視点、
ルッキズム、ジェンダーロール、
貧富の差、立場に囚われて生きることを
鮮やかに描いて、
149分全く飽きることなく楽しめました。
エンタメとしても傑作でした。

皆さんにおすすめです!

美しいヤヤ役のチャールビ・ディーンは
昨年32歳で急逝されたそうです。
すごく魅力的だった。残念です。

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