ピピン

逆転のトライアングルのピピンのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.6
やはりこの監督の視点は最高だな!

冒頭のブランドのイメージ戦略をチャカしたシーンが面白い。
この作品のテーマを皮肉たっぷりに物語っている。

上半身裸のモデル達が高級ブランド用の顔とファストブランド用の顔を繰り返す。

それそのものに価値が有るのなら表情なんて関係無い筈なのに。

この世界を形作っているのはイメージだという事だ。
まさに“雲の中“で実は何も見えてない。

そして私達はイメージに支配されているという事だろう。

皆んなが価値を認めなかったら何の役にも立たない物の代表がお金。
便所の紙にもなりはしない。
しかし、この世の中の頂点はそのお金なのだ。

劇中の登場人物達は皆世間の抱くイメージ通り、極端に記号化されて描かれている。

武器やクソなど、価値のない物を売って儲けている富豪。
外見だけで中身の無いモデルやインフルエンサー。
絶対服従の従業員達。

金持ちの上から目線の善意が最高に笑える!

そして豪華で優雅な富豪達がゲロとクソまみれになる事でイメージの通用しない世界に突入して行く。

無人島での生活は実力が全て。
生命維持に直結する能力しか役に立たたず、お金を稼ぐスキルなど何の役にも立たない。

これまで記号的だった登場人物達の剥き出しの感情が見えてくる。

意地汚さや嫉妬など!

ヒエラルキーの頂点に立った有色人種の女性が、白人イケメンを性奴隷の様に扱うのは今時のポリコレに対するちょっとした皮肉だろう。
肌の色や性別は関係無く、権力を有したらやる事は同じだ。

そして無人島と思われたこの場所も結局はどこかの誰かの資本が入ったリゾートだった事が分かり絶望感が襲う。
石を振り上げるアビゲイルの頭の中が雲に覆われていく。
振り下ろせても、振り下ろせなくとも結局は雲の中!

我々庶民が植え付けられたイメージを払拭しなければ、このおかしな世の中のヒエラルキー構造は変わらないという警告なのだろう。

メッセージは最高だが、惜しむのは二章が冗長だった事。
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