トリとロキタにずっとハラハラしっぱなしで目が離せない。過去作トップの容赦のなさかも。
ダルデンヌ兄弟が新聞記事を元に移民問題をストレートに描いた作品。手持ちカメラでの映像、劇伴なしの演出はいつもながらドキュメンタリーのような緊張感がある。
アフリカからベルギーへやってきた少年トリと少女ロキタ。2人は本物の姉弟ではないが家族のように強い絆で結ばれている。
ロキタはビザがおりないためドラッグの運び屋をしているが、稼いだ金は密航を斡旋した仲介業者に搾取されてしまう。故郷への送金が必要なため、偽造ビザを手に入れようと組織の危険な仕事に就くのだった…
ロキタを想うトリの無鉄砲な行動が危なっかしくて肝が冷える。ビザ申請の難しさ、彼らを利用する大人たち、祖国の社会状況…まだ2人は10代の子供なのに過酷すぎる現実。
ここに描かれているのは氷山の一角で、実際には売春や人身売買など数えきれない悲惨な状況があるのだと思うと…
容赦ない話だがダルデンヌ兄弟の社会への問題提起と底辺の人々を見つめる視線はいつも温かくて尊敬します。
初の演技だという2人が素晴らしかった。