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聖地には蜘蛛が巣を張るのxoのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.8
最初から最後まで、一欠片の甘さもカタルシスもない。胸糞悪さでいうと屈指。でも、心から見て良かった。
去年の「ニューオーダー」に通ずるものを感じた。

いわゆるシリアルキラー物。犯人である男の殺害の様子と普段の暮らしぶり、主人公であるジャーナリスト女性が事件解決のため行動する様子とが並行して映されていく。

絞殺シーンの迫真ぶりと生々しさがすごい。痛みや苦しみがこちらに伝わってくるよう。
出てくる女性たちに多少情が湧いたくらいのころ犯人が出現。
「逃げるんだ!」「なんとか助かってくれ…!」と祈るような思いで見ていても、淡い希望はあっさり打ち砕かれ続ける。容赦がない。
だからこそ後半に主人公と犯人が対峙するところにはものすごい緊張感がある。
音楽や音響も良く、沈鬱さを盛り上げてくれるため、映画館の閉鎖空間で見ることに価値がある。

感情的に揺さぶってくる内容でありながら、単純な解釈は許さないような奥行きや複雑さを抱えた作品でもある。
犯人はどう考えたって悪人ではあるんだけど、一人きりのとき浮かべる虚ろな表情や言動から、ある種の被害者のようにも見えるバランスだったりする。
そしてひとまずの事件解決後の展開。それまでとは別な種類の、ディストピア的な恐怖やおぞましさが顕になっていく。

社会問題とも紐付いたシリアスな話ながらエンタメとしてのスリルもしっかりあって、何気に多くの人に薦められる作品だと思った。
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