Mikiyoshi1986

インランド・エンパイアのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

インランド・エンパイア(2006年製作の映画)
3.8
明日1月20日で72歳のお誕生日を迎える"カルトの帝王"デヴィッド・リンチ監督!
おめでとうございます。

2017年は海外TVドラマの金字塔『ツイン・ピークス』待望の新シリーズが再開された一方、
映画監督業の引退を突如宣言したリンチ。

ということで今のところ、2006年に公開された本作『インランド・エンパイア』が彼にとって最後の長編映画になります。
(もう10年以上も経ってるなんて…!)

かつて主役の死によってお蔵入りになった映画『47』のリメイクを制作をする上で、
ローラ・ダーン演じるハリウッド女優が現実と虚構の世界に迷いこんでゆく安定のリンチワールドを展開。

女優としての彼女の現在が描かれる第1段階、
彼女が演じる役の世界が描かれる第2段階、
彼女の幻覚が描かれる第3段階、
ポーランドが舞台の原作ストーリーが描かれる第4段階、
かつてオリジナル『47』でポーランドの女優が演じた世界の第5段階、
そのポーランド女優がハリウッドで夢破れ次第に娼婦へ堕ちてゆく実生活が描かれる第6段階、
お蔵入りになった故にポーランド女優の魂が作品の中に閉じ込められた世界の第7段階、
その深層世界への鍵となる兎人間の部屋が映し出される第8段階…。
と、幾層にも積み重なった世界が脈絡無く繋ぎ合わされた3時間に及ぶ映像!

迷い込んだ世界は冒頭の案内人のババアが告げた市場の裏路地、映画館内の裏口、子宮に空いた穴へと続き、
そもそも本作に登場する映画館はハリウッドのショウビズを生み出す"子宮"のメタファとして位置付けられます。
ハリウッドの光と闇は謂わばスターとして成功するか、娼婦に落ちぶれるかの二拓。

支離滅裂な映像の羅列と女優の混乱とが織り成すストーリーの元、
ローラ・ダーンは役を介して、ハリウッドの忘却の底に囚われ続けているポーランド女優の内なる帝国"INLAND EMPIRE"まで下って行き、その不幸なる魂を無事救済することができるのか?!

日本語字幕では説明しきれないダブルミーニングや英語独特の表現も重要であるが故、難解な物語を更に難解にしている作品でもあったり。

本作や『マルホランド・ドライブ』で描いたハリウッドの裏側は、リンチ自身が感じたハリウッドへの失望の現れでもある為、
自由な創作が出来ない映画監督業の引退はやむを得ないことなのかも知れません。

とりあえずは『ツイン・ピークス』を心行くまでやり遂げた後、再び映像作家として辣腕を振る場所を見出だしていただきたいところ。
気長に待ってるよ!