ふじこ

ヒンターラントのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ヒンターラント(2021年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

終戦から2年以上経ってやっと収容所から出て祖国オーストリアの地を踏むものの、街は変わり国も変わり果て、軍の上司はもう戦争の事は忘れたいんだ と言って飲食に困ったらここへ行けとペラ紙を渡してここで除隊だ と去ってしまう。
一緒に帰国した7人の仲間と別れて街に戻り、家に戻ると老いた女が奥さまは出ていかれました と。


主人公ペルクの心情を表すかのように、彼が出るシーンでの背景がみんな少しずつ歪んでいる視覚効果が面白いな、とまず思った。
昔の映画みたいに物凄く分かり易い合成なのは、ここも現実感のなさの演出なのかなぁ。

収容所から脱走を出すと連帯責任で捕虜たちの10人に1人が銃殺、でびっくりした。
脱走者が出る度に成功しようがしまいが、無関係の人も巻き込んで1割殺害されるのか…。
不必要に残忍な殺し方も、脱走を計画して捕まった捕虜にされる見せしめだったと。
そして殺された仲間たちは、脱走を計画していた19人をロシア側に通報して銃殺される5千人を守った"委員会"のメンバーだったと。
なるほどな~…。見過ごせばそいつらの成否に関わらず10人に1人が銃殺される訳だろ~…うぅむ…。
その19人の内の1人はどうやら生き残ったらしく、そいつが犯人の疑い。
計画していたのは20人で、最初に委員会に密告した1人は罪悪感から頭がおかしくなってしまったらしい。

う~むむ。これが分かるのが半分もとっくに過ぎた頃。ここまで結構退屈だった。
しかしその後割とすぐに、20人の中の裏切った1名が犯人として、ペーターの声掛けで投降の意思を示したのに射殺されてしまう。
"後方から卑怯だぞ!"の後方、が"ヒンターラント"だったとは…。

世間的にも警察的にも解決だぁ~と喜ぶものの、ペルクの元に娘のブーツに入れられた手紙が届き、高い鐘楼に呼び出され真犯人登場。
手紙で呼び出した妻と娘にマスタードガスの入った箱を渡し、一人の命と数千人の命、あの時より計算は簡単だろ?と迫る。
殺された男たちは"委員会だった"って言ってたけど、じゃあなんで教会でペルクが襲われたのよ?って思ったんだけどやっぱりペルクもメンバーだった。

最初はめっちゃペルクの事を怪しんでいた若い刑事が途中から仲間になるのだけれど、未だに兄を探し回る彼に君の兄は収容所で死んだ、と伝えていたものの、その兄こそが脱走を企て、密告されて拷問死させられた19人の生き残りであり、今回の犯人だったとクライマックスで発覚。
結局僅かな間の対面で弟が兄を射殺する事になり、泣きながら 知っていたんだろう!と迫る青年を抱き締めるしかないペルク。

その後、"何年も帰郷を待ち望んでたのに"と呟くペルクに一度は関係を持った監察医である女性が"人生に戻ってきたのよ""新しい人生に"と。
自分は戦争に行く前と別の人間だし、妻もそうだけれど、逃げる訳にはいかない と言って妻の暮らす田舎の町で再会を果たすところで終わり。


いや~…なんというか、思ってたのと結構違ってかなり王道であり、ずっと鬱々とした雰囲気の映画だったなぁ。
3回くらい こ~れペルクが犯人ですわ…!とか思ってたけど違いました。してんだろ…?妄想 とか思ってたけど。わたしの妄想だった。
何もかもが変わってしまったけれど、それでも自分の人生を続けようと考えたシーンでもやっぱり建物は歪んでたから、そういう…そういう美術設定だったって事なのかしらね…。
街中は暗いし、建物は歪んでるし人物は浮いてるしなんだけど、妻と娘のいる田舎町だけは凄く現実的なのよね。
どこも捻れて歪んだりしてないし、人物も馴染んでいる。
つまり…やっぱり妻と娘という家族のいる場所が地に足をつけてこれからの人生を歩んでいく場所なのだって事なのかなぁ。

やたらふわふわした現実感の薄い中盤過ぎ辺りまで結構…話動くの遅いな…みたいな退屈感はあった。
ここがなぁ~~~みたいな部分はそんなにないのだけれど、面白かったなぁとも言い辛い。少なくとも他人には勧めない。面白くなりそうな題材だけど…って感じだったかなぁ、もったいない。

まずい…月末に引っ越しなのに半ばを過ぎて総合お片付け度が10%くらいしかない…。
なのに子供の時と変わらず、やるべき期限がある時に限って"火の鳥面白すぎだろ…"とか言って数日潰してしまう。
少しでも生産的に現実から目を逸らすため、月末までのunextポイント消化にレンタルしたのがこれ。
いや~、もっと軽い気持ちで観られるホラーが良かったんだけど丁度いいのがなかった。
ふじこ

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