ひろぱげ

喜劇 特出しヒモ天国のひろぱげのネタバレレビュー・内容・結末

喜劇 特出しヒモ天国(1975年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「喜劇」とか「天国」とかいうタイトルに騙されてはなりませんぞ。京都の、そして巡業先のストリップ劇場を舞台に、そこに出演する踊り子達と彼女らのヒモ達との悲喜交々、波瀾万丈の人生を描いた人情噺の群像劇で、人の世には楽しいこともエロいことも、辛いことも悲しいこともあるぞという実にイイ話。冒頭いきなり出てくる怪僧 殿山泰司のお説教じゃないけど、「生きててもあの世へ行っても助からん」「生きてる内は地獄じゃぞ」といった重いテーマもある。そもそもこの寺の墓地の隣がストリップ劇場なわけで、インチキ臭い和尚の説教に頷くだけの老婆達と、ピチピチの生気溢れる踊り子を交互に見せたりしてくるのですよ。エロスとタナトス。。。

しかしこれはとってもバイタリティ溢れる映画でもあった。主役(?)の山城新伍はお調子者で憎めなくてカワイイし、ストリップ小屋の女達、花形踊り子ジーン嬢(池玲子)、アル中のローズ嬢(芹明香)、性転換美女サリー嬢(カルーセル麻紀)はとってもたくましいし、老振付師の藤原釜足は「現役」だし、そして一気に人生転落していく川谷拓三はギラギラしてるし、下條アトムと森崎由紀の聾唖夫婦の健気さなど、見どころ満載。




【この後ネタバレ】

最初、車のセールスマンだった山城チョメチョメ新伍であるが、ストリップ小屋の社長の所に月賦の取り立てに行っている内に無理矢理劇場の支配人にさせられ、いつの間にか花形踊り子ジーン(池玲子)のヒモに。そして、放蕩のあまり彼女に逃げられ、別の踊り子ローズ(芹明香)のマネージャーになる。しかしついにはローズに未練ありまくりの川谷拓三(この人も刑事からローズのヒモ、そんでアル中のストーカーと真っ逆さまに転落)に刺されちゃうという、まさに波瀾万丈の生き様。なんとか一命を取り留め入院中の新伍をジーンが見舞うんだけど、その時のジーンの思いも新伍には届かず、結局女心が分からないダメな男のもとをジーンは去って行くのだ。(これはそのまま実際の山城新伍の哀れな晩年にも重なるわけですな・・・。)

山城新伍がカワイイと言われてもピンとこない人も多いことだろうが、池玲子とのシーンの「なんで?」というセリフなんて、こりゃあ女は放っとかないやというカワイサ炸裂。そんでもってズルイのである。
この人、去年見た「瀬戸はよいとこ 花嫁観光船」でも、最初は真面目で一途な青年→次第にお調子者のスケベ野郎の本性を顕すというキャラだったのだが、本人がまさにそんな感じだったんだろうなと思われる。
そして、ローズちゃんこと芹明香の体当たり演技も凄かった。終始酒浸りでいつ死んじゃうかとハラハラさせる危うさながら、逆に最も生命力強そうなキーパーソンである。最後、一斉手入れで護送される京都の町中を睨み付けるその面構えよ!

冒頭の寺とストリップの対比も面白かったが、劇場の楽屋の蛸部屋で、踊り子達とそれぞれのヒモ達が寝泊まりしてるっていうシステムも興味深い。そんで、ある一組が「行為」に及ぶとそれが伝染し、しまいには全員が緩やかなピストン運動の波を起こすという、奇跡的な名シーンも見逃せなかった。
ちなみに、タイトルの「特出し」とは、ストリップ嬢が局部をお客さんに見せちゃうことで「御開帳」とも言う。そんでさらにちなみに、後半のテーマ曲のように歌われる「♪男と女の間には、深くて暗い河がある・・・」は、野坂昭如や加藤登紀子らが歌った「黒の舟唄」という曲である。
ひろぱげ

ひろぱげ