櫻イミト

犯罪都市の櫻イミトのレビュー・感想・評価

犯罪都市(1931年製作の映画)
3.0
「嵐が丘」(1939)などの名脚本家ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーサーの代表戯曲「フロント・ページ」(1928)の初映画化。新聞記者が主役の社会風刺喜劇。

シカゴの警察本部ではアールという男が“赤”の容疑で死刑を明日に控えていた。署内では新聞記者たちが処刑時間の話をしながら暇を持て余していた。そこに、腕利き記者ジョンソン(パット・オブライアン)が仲間に別れを告げに来る。彼はこの仕事に嫌気がさし、恋人ペギィと翌日ニューヨークに旅立つのだという。そこへ銃声と共にアール脱走の報が入ってきた。ジョンソンは直ちに社の編集長バーンズ(アドルフ・マンジュウ)に報告、記者を辞めるはずが継続取材を命じられ。。。

のべつ幕無しに会話を畳みかける、後のスクリューボール・コメディの先駆のような風刺喜劇。個人的には苦手ジャンルの映画だった。舞台戯曲の映画化なので本編の大半が警察署内の記者室。カメラを色々と動かす工夫は見られたが、演出の軸が“会話”であることからは脱せなかった印象。

政治と新聞、双方への権力批判は感じられた。しかしテーマ性に限って比べたら、同年の「特輯社会面」(1931)の方が説得力が高く好みだった。

※原作戯曲の元ネタ「サッコ=ヴァンゼッティ事件」
1920年、マサチューセッツ州で起こった靴工場強盗殺人事件の容疑者としてイタリア移民でアナーキストのサッコとヴァンゼッティの二人が逮捕。しかし偏見による冤罪との疑惑があり、欧米各地で左翼系のデモが行われる大問題となった。結局、十分な証拠がないまま1927年に死刑執行され、アメリカ合衆国の歴史上の汚点と呼ばれている。
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