レインウォッチャー

BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

2.5
A24発の密室×人狼スリラー、日本では配信スルー。いつもありがとう僕らのインターネットたち。

リッチでウェイ系な男女7人が、嵐の夜のパーティで「Bodies Bodies Bodies」なるゲームを始める。Body=死体、くじで選ばれた殺人者役を当てるという所謂人狼系ゲームだ。
しかし案の定ほんとに殺人が起こってしまい、表面上はズッ友ずっしょだよぉなんて言ってた彼らもパニックと疑心暗鬼のコンボでぐちゃめちゃに。

…という、実は古典的ともいえる安定感をもった小品であり、アガサ・クリスティ的マナーのサスペンスは令和でもまだまだコスれる、という感嘆がひとつ。
そして、スパイスとして機能するA24らしい撮影やライティングの妙によってカルチャー成分を適度に摂取した気になれて、予定のない日曜でも心が落ち着くのがひとつ。特に今作は屋敷内の暗闇シーンが多い中、ネオンライトやサイリウムを使った光の演出が映えて、画面をクラブにも地獄にも見せてたのしい。

ただ、肝心の心理ドラマの部分というか、顕わになってくる各自の秘密や本音、最後のとある「オチ」まで含めてなんともステレオタイプな「Z世代ってどうせこんなんでしょ」感を出ないのはいただけない。これが5~6年前の作品ならまだしも、インスタントスリラーとはいえちょっと見逃せません。キップ切ります。

スマホやSNSを中心にした若い世代の価値観をうまく風刺してるつもりだと思うのだけれど、劇中にはアザーサイドがうまく表現されておらず、それに映画を作ってるのはオトナたちである以上フェアじゃないと感じるし、加齢臭が拭えない。
審査員のロートルたちとこれ観て笑ってるうちは、分断は埋まらない気がする。それより息子とか姪っ子とかとちゃんと話してほしい、一回。

で、監督どなた?と思えば、ハリナ・ラインさん47さい。あーね…ってよく見たらポール・ヴァーホーヴェンの神作『ブラックブック』で主人公の同僚・友人役を演じてた女優さんじゃあないか。2019年に監督デビューされていて、今作が長編2作目なのですね。

あの映画はまさに「偏った視点こそファ●ックだ」ということを心のタトゥに刻みつけるような作品だったはずなのに、何を学んだというのだろう。もう一度観よう、『ブラックブック』。シネマ・シネマ・シネマ、ストーリーはこれから。